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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】
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『そういうお前が、なんだかんだで一番はしゃいでるけどな』
そう言って【A】の肩を叩いたのは【C】である。丸坊主で大男の【C】にいたっては、テロップで説明を入れること自体がおこがましいほど特徴的だった。
『そりゃ、今回の旅行は楽しみにしてたからよ』
軽く【C】に指摘された【A】だったが、まんざらではないといった様子でエントランスホールを見回す。エントランスが特別に広いというわけではないものの、左右に伸びる廊下が、まるでエントランスホールと同じ広さというのは中々に圧巻である。
『まぁ、当たり前だけど【B】と同じ部屋ってわけにはいかなったけどな。残念……。愛の告白はおあずけか?』
【C】は【A】だけに聞こえるように、【A】の耳元に顔を近づけて言う。どうやら【A】は【B】のことが気になっているという設定らしい。
『そりゃ、仕方ないだろ。それに、【B】は周りからもマドンナ扱いされてるし、俺なんて眼中にないよ』
なんとも説明臭い台詞だろうか。脚本を書いたやつを見てみたい。九十九の溜め息を尻目に、【A】と【C】のやり取りは続く。
『でも、あいつはいつも俺達と一緒にいてくれるだろ? 嫌なやつとなら一緒にいないだろうし、チャンスはあるんじゃないか?』
背中を押すような、それでいて焚き付けるかのように言う【C】であるが、それを【A】はバッサリと切り捨てる。
『それは、俺とあいつが幼馴染だからだよ。小さい頃からずっと一緒だから、他のやつとつるむより居心地がいいらしい』
少し離れたところでエントランスホールを見渡す【B】のことを眺めつつ、【A】は小さく溜め息を漏らした。その視線に気づいた【B】は、2人に向かって『ほら、部屋に向かうよー』と手を振る。それを見て苦笑いを浮かべたのは【A】だ。
『なんにせよ、今日は【B】と2人っきりでここに来たわけじゃないし、いくら幼馴染だとしても同じ部屋に泊まるなんてことはできないさ』
歩き出した【B】に続く形で歩き出した【A】と【C】。廊下には制服姿の高校生達が横になって歩いており、通行の妨げになっているようだった。仕方ないといった具合で、ゆっくりとした歩行速度にペースを合わせる【A】達。
『まぁ、俺達は同じ部屋だからな。夜はお前の恋バナに花を咲かせますか』
ペースがゆっくりになったせいで、先を歩いていた【B】に追いついてしまった。【C】の言葉が【B】の耳に届いてしまったようで、振り返ると『何の話をしているの?』と問うてくる。【A】は首を緩く横に振ると『他愛もない世間話だよ』と返した。
そう言って【A】の肩を叩いたのは【C】である。丸坊主で大男の【C】にいたっては、テロップで説明を入れること自体がおこがましいほど特徴的だった。
『そりゃ、今回の旅行は楽しみにしてたからよ』
軽く【C】に指摘された【A】だったが、まんざらではないといった様子でエントランスホールを見回す。エントランスが特別に広いというわけではないものの、左右に伸びる廊下が、まるでエントランスホールと同じ広さというのは中々に圧巻である。
『まぁ、当たり前だけど【B】と同じ部屋ってわけにはいかなったけどな。残念……。愛の告白はおあずけか?』
【C】は【A】だけに聞こえるように、【A】の耳元に顔を近づけて言う。どうやら【A】は【B】のことが気になっているという設定らしい。
『そりゃ、仕方ないだろ。それに、【B】は周りからもマドンナ扱いされてるし、俺なんて眼中にないよ』
なんとも説明臭い台詞だろうか。脚本を書いたやつを見てみたい。九十九の溜め息を尻目に、【A】と【C】のやり取りは続く。
『でも、あいつはいつも俺達と一緒にいてくれるだろ? 嫌なやつとなら一緒にいないだろうし、チャンスはあるんじゃないか?』
背中を押すような、それでいて焚き付けるかのように言う【C】であるが、それを【A】はバッサリと切り捨てる。
『それは、俺とあいつが幼馴染だからだよ。小さい頃からずっと一緒だから、他のやつとつるむより居心地がいいらしい』
少し離れたところでエントランスホールを見渡す【B】のことを眺めつつ、【A】は小さく溜め息を漏らした。その視線に気づいた【B】は、2人に向かって『ほら、部屋に向かうよー』と手を振る。それを見て苦笑いを浮かべたのは【A】だ。
『なんにせよ、今日は【B】と2人っきりでここに来たわけじゃないし、いくら幼馴染だとしても同じ部屋に泊まるなんてことはできないさ』
歩き出した【B】に続く形で歩き出した【A】と【C】。廊下には制服姿の高校生達が横になって歩いており、通行の妨げになっているようだった。仕方ないといった具合で、ゆっくりとした歩行速度にペースを合わせる【A】達。
『まぁ、俺達は同じ部屋だからな。夜はお前の恋バナに花を咲かせますか』
ペースがゆっくりになったせいで、先を歩いていた【B】に追いついてしまった。【C】の言葉が【B】の耳に届いてしまったようで、振り返ると『何の話をしているの?』と問うてくる。【A】は首を緩く横に振ると『他愛もない世間話だよ』と返した。
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