クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
272 / 506
第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】

29

しおりを挟む
『そういうお前が、なんだかんだで一番はしゃいでるけどな』

 そう言って【A】の肩を叩いたのは【C】である。丸坊主で大男の【C】にいたっては、テロップで説明を入れること自体がおこがましいほど特徴的だった。

『そりゃ、今回の旅行は楽しみにしてたからよ』

 軽く【C】に指摘された【A】だったが、まんざらではないといった様子でエントランスホールを見回す。エントランスが特別に広いというわけではないものの、左右に伸びる廊下が、まるでエントランスホールと同じ広さというのは中々に圧巻である。

『まぁ、当たり前だけど【B】と同じ部屋ってわけにはいかなったけどな。残念……。愛の告白はおあずけか?』

 【C】は【A】だけに聞こえるように、【A】の耳元に顔を近づけて言う。どうやら【A】は【B】のことが気になっているという設定らしい。

『そりゃ、仕方ないだろ。それに、【B】は周りからもマドンナ扱いされてるし、俺なんて眼中にないよ』

 なんとも説明臭い台詞だろうか。脚本を書いたやつを見てみたい。九十九の溜め息を尻目に、【A】と【C】のやり取りは続く。

『でも、あいつはいつも俺達と一緒にいてくれるだろ? 嫌なやつとなら一緒にいないだろうし、チャンスはあるんじゃないか?』

 背中を押すような、それでいて焚き付けるかのように言う【C】であるが、それを【A】はバッサリと切り捨てる。

『それは、俺とあいつが幼馴染だからだよ。小さい頃からずっと一緒だから、他のやつとつるむより居心地がいいらしい』

 少し離れたところでエントランスホールを見渡す【B】のことを眺めつつ、【A】は小さく溜め息を漏らした。その視線に気づいた【B】は、2人に向かって『ほら、部屋に向かうよー』と手を振る。それを見て苦笑いを浮かべたのは【A】だ。

『なんにせよ、今日は【B】と2人っきりでここに来たわけじゃないし、いくら幼馴染だとしても同じ部屋に泊まるなんてことはできないさ』

 歩き出した【B】に続く形で歩き出した【A】と【C】。廊下には制服姿の高校生達が横になって歩いており、通行の妨げになっているようだった。仕方ないといった具合で、ゆっくりとした歩行速度にペースを合わせる【A】達。

『まぁ、俺達は同じ部屋だからな。夜はお前の恋バナに花を咲かせますか』

 ペースがゆっくりになったせいで、先を歩いていた【B】に追いついてしまった。【C】の言葉が【B】の耳に届いてしまったようで、振り返ると『何の話をしているの?』と問うてくる。【A】は首を緩く横に振ると『他愛もない世間話だよ』と返した。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます

古池ケロ太
ミステリー
 わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。  古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...