上 下
260 / 506
第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】

17

しおりを挟む
「第1問の事件が起きたキャンプ場と、第2問の事件が起きた高原が、それぞれご近所さんだったってことか――。こりゃ、妙な共通点が出てきたな」

 出雲は煙草に火を点けながら呟く。思わず小野寺もつられそうになったが、今後のことを考えて我慢した。この状況がどれだけ続くのか分からないのだ。出雲のように息を吸うのと同じ感覚で煙草を吸っていては、後がもたなくなるだろう。いっそのこと、今ある煙草の在庫だけは、出雲と綺麗に半分ずつ分けておいたほうがいいのかもしれない。ちょっとばかり思考が脇道へとそれてしまった小野寺を引き戻すかのごとく、映像は高原から再び街並みのほうへと向かい、そのまま地面に落下するかのごとく降下していく。そこでようやくナレーションが入った。

『東京からのアクセスも良く、近場であるにもかかわらず大自然に触れることのできる某県某市――。車で行くにもそこまで遠くはなく、また鈍行列車に揺られる時間もほどよい場所にある。年を追うごとに過疎化していた町でしたが、地域を活性化させる活動が功を奏したおかげで、辛うじて過疎化を食い止めることができた町でもあります。今では、意識高い系芸術家かぶれの若者の移住などもあり、一時期に比べれば人口もやや増えています』

 思い込みというものは良くないものであるが、空撮映像で見てきたものが見てきたものであるため、やはり頭が勝手に連想してしまう。地域を活性化させる活動というのは、おそらく芸術家を招いて、高原にへんちくりんな建造物を建てたりした町おこしのことを指していると思われる。つまり、あの【虚無の石櫃】のある町――もしくは市内が、次の問題の舞台となるようだ。むろん、第1問で出てきたキャンプ場も、その特徴からして同じ市内にあったものであると推測できる。

「ケンさん。今考えてることって――多分、一緒ですよね?」

 くわえ煙草の出雲は、頭をぽりぽりとかきながら頷いた。

「あぁ、1問目、2問目に限らず、このクイズ番組で出題される問題は、同じエリア内で起きた事件が元になってるらしい。解答者の住所はバラバラなはずなのに」

 番組の1回目を思い出してみる。確か、解答者は全員が東京都在住だったはず。住んでいる区こそ違えども、見事に東京の人間ばかり集めたものだ――との感想が頭の中に残っていた。しかし、ナレーションによると、問題の場所は東京ではないらしい。東京からほどよい距離のどこか……らしいが、詳細は不明だ。ただ、芸術で町おこしをするなんて珍しい試みだから、ネットで調べれば分かりそうだ。もっとも、そのネットに触れることができない環境にいるわけだが。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

鬼退治に行こう

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

冴えない俺

ホラー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

虚構の檻 〜芳香と咆哮の宴~

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

婚約破棄された令嬢「うわっ・・・私の魅力、低すぎ・・・?」

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:23

グロくない

Ken
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

【完結】一本の電話

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...