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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】

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 九十九の主張はもっともなものであり、その場にあるピースをつなぎ合わせただけであるが、彼の疑いを晴らすには充分すぎた。頭から疑ってかかっていた長谷川も観念したようで、議論は九十九が論破した形で終了。それを見計らっていたかのごとく、柚木を連れた藤木が戻ってきた。

 柚木は周囲の人間に詫びを入れ、藤木が恐ろしいペナルティーの話をしてスタジオを凍らせる。ふざけたノリで進行されるクイズ番組ではあるが、やるときはやるというべきか、その辺りのメリハリはしっかりとついている。――番組の進行に多大なる影響を与えるような行為をした場合は降板となる。判断するのは藤木ということになるのであろうが、解答者達からすれば恐怖でしかないだろう。結局、従わざるを得ないということだ。

「まるで恐怖政治だな。まぁ、あの藤木とかいうやつからすれば、番組が第一であって、その進行に邪魔が入るのが嫌なんだろうが」

 解答者達は、生き延びるためにクイズ番組に出続けなければならない。拒否権はなく、勝手に拒否してしまったら降板扱いとなってしまう。なんとも理不尽な話であり、恐怖政治という出雲の表現も、決して間違ってはいないだろう。

「彼の目的はなんなんでしょうねぇ……」

 実のところ、そこがいまだに分からなかった。そもそも、こんな過激な内容の番組、地上波で流せるわけがない。わざわざテロップで【後でスタッフがおいしくいただきました】と入れなければ、食材を粗末にするなとクレームが入る世の中だ。犯罪者を断罪する番組だとしても、明らかに子どもには悪影響な内容であるし、何よりもクイズの結果によって、実際に人が死んでいる。地上波に垂れ流しにしていたらBPO……放送倫理番組向上機構が黙っちゃいない。となると、ネット配信ということになるのだろうが、しかし内容が内容なだけに、バッシングを受けることは間違いないように思える。

 果たして、この番組は、誰のために、そして誰に向けて放送されているものなのか。元より情報が少ないため、考えるだけ無駄なのかもしれないが、やはり気になってしまう。

「それが分かれば苦労はしないな。ほら、どうやら第3問が始まったみたいだ」

 藤木が番組を進行させ、そしていつものモニターがスタジオの天井から降りてくる。藤木の「再現映像から参りましょう」との言葉と同時に画面が切り替わった。これからブラウン管に流れるのは再現映像だ。
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