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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【プロローグ】

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『……え? あのシャンパンって何か入っていたの?』

 まだ画面が元に戻らないというのに、カメラは凛の不安そうな声を拾う。

『それはお答えできませんねぇ。そもそも、どうして数藤さんが亡くなってしまったのか、調べないと分かりませんから。この辺りのことは、また番組が始まった際に皆さんにお伝えすることにしましょう』

 まだ、時折咳き込みながらも、ようやく体制を立て直した藤木は、またしても自撮りのような撮影方法を取りながら、カメラに向かって笑みを浮かべる。

『さぁ、司馬さんに続いて数藤さんも降板されました。果たして、この先どれくらいの方が、彼らと同じ末路をたどることになるのでしょうか? それでは、また明日の放送をお楽しみに!』

 緊急特番は、あくまでも数藤が死んだという事実を伝えるためだけのものなのであろう。九十九に食ってかかられたのが原因かどうかは分からないが、早々に切り上げ、その場を脱出する藤木。カメラ越しにも、解答者達の――特に九十九の殺伐とした空気が伝わってきた。謎を解き明かせば、犯人だった人間が死んでいく。解き明かさなくとも、誰かが必ず1問ごとに降板する。徐々に増えていく犠牲者に、解答者達は何を思うのだろうか。少なくとも、ネガティブな思考に取り巻かれているに違いない。

 藤木の挨拶と同時に、ぷつりと切れてしまった映像。ブラウン管には、神妙な表情を浮かべた出雲と小野寺の顔が映っていた。

「司馬に続いて数藤まで――。どうにかしてやりたいが、何もできないというのが、中々に歯痒いな」

 消えてしまった画面。小野寺達は画面越しに九十九達のことを見守ることしかできない。彼らの力になることはできないし、どんなに手を貸してやりたくとも、手を貸せる状況にない。

「人の心配をしている暇はないんですけどね。こんなものを見せつけられて、黙っていられる刑事なんていないんじゃないですか? 想いはケンさんと同じですよ」

 窓の外に視線をやると、徐々に太陽が高くなっているようだった。また、頃合いを見て食料を漁り、シャワーでも浴び、暗くなるまで何をするとでもなく過ごし、また夕食の頃合いに食料を口にして、明るくなるまで眠るのであろう。特番を含めても、番組は午前中には終わってしまうから、それから翌日までは、どうしても手持ち無沙汰になってしまう。いや、解答者達からすれば、それは贅沢な悩みなのであろうが。

「誰が一体、何のためにこんなことをしているのか――」

 ぽつりと漏らした小野寺は、ソファーにごろりと寝転ぶと、コンクリート剥き出しの無機質な天井へと問うたのだった。そばいた出雲は「さぁな――」と呟き、そして天井は何も答えてくれないのであった。
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