クイズ 誰がやったのでＳＨＯＷ

第３問 過去は明日と同じ夢を見るか【プロローグ】

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　番組中はリーダーシップを取っていたが、その雰囲気と言動から、基本的に他人に興味がないように見える九十九。そんな彼が急に凛のことを心配しだしたものだから驚いた。そもそも、どうして凛のことを心配する必要があるのか。

『あ、うん……。別になんともないけど』

　やや戸惑った様子で凛が答えると、九十九は小さく溜め息を漏らす。それが安堵の溜め息であるかのように見えたのは、小野寺の気のせいなのか。そんな九十九は休む暇なく、今度は藤木へと掴みかかった。画面がやや揺れたが、察するに藤木の胸ぐらを掴んだようだ。その状態でも、辛うじて自撮りをしている藤木の姿には、プロ根性のようなものが見受けられる。

『おい、藤木――お前、あのシャンパンに何を入れた？』

　画面がゆっくりと上へと移動する。胸ぐらを掴まれたまま持ち上げられたようだ。苦しそうに藤木が返した。

『さ、さて……何のことでしょうか？』

　司会者の胸ぐらを掴んだ解答者が、文字通り司会者を吊るし上げようとしている。今の世の中であれば、完全に放送事故レベルの光景である。しかし、当たり前のようにカメラは回り続ける。

『番組側から数藤に、シャンパンの差し入れがあっただろうが？　あのおっさんは、俺の楽屋に来てからシャンパンしか口にしてねぇ。だったら、あれに毒かなんかが入っていたとしか思えねぇんだよ！』

　状況がいまいち掴めないが、察するに数藤の死因について九十九は言及しているようだ。九十九の言葉から推測するに、番組側が数藤に対してシャンパンを差し入れたらしい。そして、それを飲んだからこそ数藤は死んでしまったのだと、九十九は疑っているようだった。藤木は何かを答えようとするが、吊るし上げられているせいか、まともに声が出ないらしい。苦しげな言葉の端々が画面の外から聞こえてくる。

『ちょっと、やめなって。それ以上やったら死んじゃうかもしれないから！』

　やはり、女性陣の中では彼女が一番気が強いのであろう。いや、言うべきことをはっきりと言うタイプと例えるべきか。九十九と藤木のやり取りを見かねたであろうアカリが、九十九を止めに入る。長谷川はどこに行ったのか、画面内には見当たらない。こんな時、九十九の暴走を物理的に止められるのは、唯一の同性である長谷川くらいだろうに。ただ、アカリの一言で多少は冷静になったのか、再び画面が大きく揺れると、カメラは廊下の一角を映し続け、その背後からは藤木が懸命に酸素を取り入れようとする呼吸音と、咳き込む音が聞こえていた。