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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【プロローグ】
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黒幕。このクイズ番組の中に潜んでいる影の立役者。それが果たして誰なのか――現状では推測もへったくれもなかった。
「さぁ、皆目検討もつきませんね。司馬が殺害された時の情報が少なすぎます。あの緊急特番だけじゃ、誰が黒幕なのかは分かりませんね」
黒幕について分かっていることは、テレビを見ている限りでは少ない。まず、藤木が首謀者というわけではなく、黒幕のほうが首謀者であり、あくまでも藤木が協力者であるということ。そして、藤木がはっきりと言っていたが、黒幕はどうやら、あの時スタジオにいた人間の誰か――ということになる。
「それにしても、黒幕とかいうやつは何を考えているんだか。俺達がこんなところに監禁される意味も分からないしなぁ」
根本ぎりぎりまで煙草を吸うと、口惜しそうにしながらも床で揉み消す出雲。内装はコンクリートに覆われた空間であるからこそできることだろう。そんな出雲に、小野寺は心のどこかで引っかかっていることを問うてみる。
「それはそうとケンさん。クイズ番組に出てる解答者の中に――見覚えのある人が混じっていたりしません? 全員というわけではないんですけど、なんとなく見たことがある顔が混じっているというか。いや、誰が……って問われてしまうと答えるのが難しいんですけど、もしかしたら過去に仕事で関わったりしていないかなと思いまして」
なんと例えたら良いのか分からないが、小野寺には解答者達に対する漠然とした既視感があった。誰がどう――というわけではないが、なんとなく知っている顔が混じっているように思えるのだ。ただの勘違いならばいいのだが、一部とはいえ過去の記憶を失っている分、その既視感が妙に際立っているように思えた。
「いや――俺には見知った顔なんざないけどなぁ。お前の思い過ごしじゃないのか?」
もしかしたらと思ったが、しかし出雲は解答者に対して既視感を抱いたりはしていないらしい。集められた8人に共通項らしきものは見当たらないし、年齢もバラバラだ。中学や高校の同級生ということもないだろう。それならばさすがに覚えているだろうし。
「そうですか……」
小野寺が呟くと、まるでそれがスイッチだったかのようにブラウン管が唸った。少しずつぼんやりと画面が明るくなっていき、そして画面には人の姿が映し出された。藤木である。前回と同じ場所からの放送らしく、画面の左上のほうには【スタジオ前廊下】とのテロップが入っていた。
「さぁ、皆目検討もつきませんね。司馬が殺害された時の情報が少なすぎます。あの緊急特番だけじゃ、誰が黒幕なのかは分かりませんね」
黒幕について分かっていることは、テレビを見ている限りでは少ない。まず、藤木が首謀者というわけではなく、黒幕のほうが首謀者であり、あくまでも藤木が協力者であるということ。そして、藤木がはっきりと言っていたが、黒幕はどうやら、あの時スタジオにいた人間の誰か――ということになる。
「それにしても、黒幕とかいうやつは何を考えているんだか。俺達がこんなところに監禁される意味も分からないしなぁ」
根本ぎりぎりまで煙草を吸うと、口惜しそうにしながらも床で揉み消す出雲。内装はコンクリートに覆われた空間であるからこそできることだろう。そんな出雲に、小野寺は心のどこかで引っかかっていることを問うてみる。
「それはそうとケンさん。クイズ番組に出てる解答者の中に――見覚えのある人が混じっていたりしません? 全員というわけではないんですけど、なんとなく見たことがある顔が混じっているというか。いや、誰が……って問われてしまうと答えるのが難しいんですけど、もしかしたら過去に仕事で関わったりしていないかなと思いまして」
なんと例えたら良いのか分からないが、小野寺には解答者達に対する漠然とした既視感があった。誰がどう――というわけではないが、なんとなく知っている顔が混じっているように思えるのだ。ただの勘違いならばいいのだが、一部とはいえ過去の記憶を失っている分、その既視感が妙に際立っているように思えた。
「いや――俺には見知った顔なんざないけどなぁ。お前の思い過ごしじゃないのか?」
もしかしたらと思ったが、しかし出雲は解答者に対して既視感を抱いたりはしていないらしい。集められた8人に共通項らしきものは見当たらないし、年齢もバラバラだ。中学や高校の同級生ということもないだろう。それならばさすがに覚えているだろうし。
「そうですか……」
小野寺が呟くと、まるでそれがスイッチだったかのようにブラウン管が唸った。少しずつぼんやりと画面が明るくなっていき、そして画面には人の姿が映し出された。藤木である。前回と同じ場所からの放送らしく、画面の左上のほうには【スタジオ前廊下】とのテロップが入っていた。
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