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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】

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 非現実的。あまりにも非現実的である。そもそも、警察というものは組織力が基礎となっているようなもの。簡単に個人の力でどうこうできるものではないし、ましてや事件そのものを揉み消す――なんてことはできないはずだ。確かに、実際にキナ臭い事件もあったりするわけだが、まず一般的に考えて悪徳刑事とやらの力で事件を揉み消すことなんてできるわけがない。

「非現実的ではないよ。事実、私は罪を逃れたのだからな。まぁ、こうして奇妙なクイズ番組には巻き込まれることになってしまったが」

 数藤の言葉に、九十九は思考を張り巡らせる。もし、司馬の事件に関しても、その悪徳刑事とやらが絡んでいて、事件の揉み消しが行われたとしたら。数藤が事件を起こしたのは某高原。そして、司馬が事件を起こしたのが某キャンプ場。どちらも東京から離れた場所だと思われる。この現場が、もし同じ警察署の管轄内だったとしたら――いや、考えすぎだろうか。

「もしかして司馬のやつも……」

 考えが頭から溢れ出し、そして口からこぼれた。それに対して数藤は笑みを浮かべる。

「可能性としては充分にあり得るな。確か、事件現場を下見した際、高原の麓のほうにキャンプ場があるのを確認している。キャンプ場なんてどこにでもあるようなものだし、断定することはできないが――しかし否定することもできないだろうな」

 受け答えをする数藤を見て、九十九は小さく溜め息を漏らす。まるで傍観者というか、ドロップアウトした人間が高みの見物をしているような感覚なのであろう。楽屋にはロックがかかっていることだし、さすがに九十九がいる前で、黒幕が数藤を殺しにくるとも思えない。油断していた。数藤はもちろん、九十九も。

「もし、おっさんと司馬が同じ悪徳刑事とやらに関与していたとしたら――まるで赤の他人だった俺達に、共通点のあるやつが出てくる。そもそも、この番組のコンセプトは、過去に起きた未解決事件の犯人を当てるというものだ。まだ断定はできないが、もしかすると、俺達が集められた理由ってのも、明確なものがあるかもしれない」

 これは推測の域を出ない。数藤のいう悪徳刑事とやらが実在するかも分からないし、ましてや司馬と数藤の両名に関与しているとも限らない。それに――少なくとも九十九は悪徳刑事とやらにはまるで関与しておらず、ゆえに司馬と数藤に共通項があったとしても、他の人間まで一括りにすることはできない。
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