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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】

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 実のところ、これは第1問目の時点で抱いていた疑問でもあった。

 司馬が手を染めた殺人に関しても、不審な点がいくつか残っている。例えば、川の上流から遺体を流すというトリック。長いこと川を下っていけば、衣服に多少の傷がついたり、遺体そのものに、川を下ってきた痕跡が残されていてもおかしくはない。けれども、クイズとして出された事件の概要には、そのような情報は含まれていなかった。それに、司馬は被害者を殺害した後、自分の車に遺体を隠したわけだが、それだって簡単に見つかってしまいそうなものだ。それなのに、まるで絵に描いたように司馬の犯罪は成功し、彼は警察に捕まらなかった。そして、数藤もまた警察には捕まっていない。

「くっくっくっくっ――世の中にはねぇ、善行をする悪人はいなくとも、悪行に手を染める善人はいるということなんだ」

 意味深なことを口にすると、笑いを噛み殺す数藤。

「……それ、どういう意味だ?」

 九十九の問いに、数藤は3杯目となるシャンパンをグラスに注ぎながら口を開く。

「そのままの意味だよ。世の中、金さえあれば、ある程度はうまくまかり通ってしまうのさ。私はある人物と取り引きしたんだ。その結果――警察から逮捕されずに済んだんだよ」

 九十九は事件のことを再現映像としてしか知らない。けれども、第2問までやって来て率直に感じたことがひとつ。クイズとして趣向を凝らしたものにはなっているが、これを普通の事件であると見た場合、決して警察に解けない謎ではない。むしろ、日本の警察は優秀であり、この程度の事件ならば簡単に犯人を検挙できたはず。けれども、実際のところ司馬と数藤は警察に捕まっていない。

「その、ある人物ってのはもしかして」

 ここまでの話を聞いた時点で理解した。金を渡すことで事件がどうこうなってしまう可能性があるのは……特定の職種しかいないだろう。

「悪徳刑事さ。以前からちょっとした噂になっていてねぇ。金さえ渡せば、事件を絶対に揉み消してくれる刑事がいるって――。そいつと契約を結んだんだよ。だから、私が起こした事件はお蔵入り。未解決となったんだ」

 それは九十九からすれば単純な疑問にすぎなかった。しかし、その疑問の答えには、悪徳刑事という予期せぬものが含まれていた。そんなものはドラマだとか漫画の中の話だと思っていたからだ。

「おいおい、おっさん。それ真面目に答えてんのか? そんな非現実的なことを言われても――」
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