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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】
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凛が出て行ってからしばらく。楽屋の扉のほうからガチャリと音がする。数藤が扉の前まで向かい、ロックがかかったことを確認したのか、気味の悪い笑みを浮かべた。マッドサイエンティストとやらが、きっとそのような笑みを浮かべるのであろう。
「くっくっくっく……。これで私に手を出そうにも手を出せまい。来るなら来てみろ――というものだ」
楽屋にはロックがかかり、本来ならば数藤にペナルティーが生じる。しかしながら、数藤はすでに番組を降板となっている立場であり、別に解答権が失われたところで痛くも痒くもない。そのルールの隙を突いて、数藤が打ち出してきた生存戦略。それは果たしてうまくいくのだろうか。どうやら九十九自身が生き証人になりそうだ。
「おい、おっさん。どうせ明日の朝まで楽屋から出られないんだ。ちょっとばかり聞かせてもらいたいことがある」
当たり前であるが、楽屋には時間を潰せるようなものがない。寝るにしても早いだろうし、手持ち無沙汰になってしまう。ただ、九十九には目論みがあった。少しばかり引っかかることがあり、それを数藤に確認しておきたかったのだ。
「なんだろうか? どうにも時間を持て余しそうであるし、話の内容によっては付き合ってやらんでもないが」
数藤の提案により、ある意味匿ってやっているのだ。こちらの要求くらい、ふたつ返事で受け入れてくれてもいいようなものなのに。
楽屋の化粧台の上に腰をかける数藤。ソファーの数がないため、他に座れそうな場所もない。そこが彼の定位置になりつつあった。
「あんた――あんな適当なやり方で、よく警察に捕まらなかったな。何か裏があるんじゃねぇか?」
九十九が一言目を切り出すと、さらに気味の悪い笑みを浮かべつつ「さて、どういうことかな?」と、九十九のことを試すかのように問うてくる数藤。
「だから、やり方が適当なんだよ。例えば【虚無の石櫃】の壁を壊して、遺体を中に入れた後に新しい壁を作ったってトリック――現場には壁を壊した際の削りカスが残されていたようだし、後で穴を塗り固めたといっても素人仕事だろ? いくらうまくやっても、ちょっと警察が調べる気になれば【虚無の石櫃】に穴を開けて、その後になって穴を塞いだことくらい分かりそうなものだ。それに、関係者の足取りを調べれば、事件当日にアリバイがないのがあんただけってことは分かっただろうし、車の中や家を調べられたら、犯行の実行が可能だったことくらい判明したはず。だが、実際のところあんたは捕まっていない。つまり、未解決になるには事件そのものが杜撰だと思うんだよ」
「くっくっくっく……。これで私に手を出そうにも手を出せまい。来るなら来てみろ――というものだ」
楽屋にはロックがかかり、本来ならば数藤にペナルティーが生じる。しかしながら、数藤はすでに番組を降板となっている立場であり、別に解答権が失われたところで痛くも痒くもない。そのルールの隙を突いて、数藤が打ち出してきた生存戦略。それは果たしてうまくいくのだろうか。どうやら九十九自身が生き証人になりそうだ。
「おい、おっさん。どうせ明日の朝まで楽屋から出られないんだ。ちょっとばかり聞かせてもらいたいことがある」
当たり前であるが、楽屋には時間を潰せるようなものがない。寝るにしても早いだろうし、手持ち無沙汰になってしまう。ただ、九十九には目論みがあった。少しばかり引っかかることがあり、それを数藤に確認しておきたかったのだ。
「なんだろうか? どうにも時間を持て余しそうであるし、話の内容によっては付き合ってやらんでもないが」
数藤の提案により、ある意味匿ってやっているのだ。こちらの要求くらい、ふたつ返事で受け入れてくれてもいいようなものなのに。
楽屋の化粧台の上に腰をかける数藤。ソファーの数がないため、他に座れそうな場所もない。そこが彼の定位置になりつつあった。
「あんた――あんな適当なやり方で、よく警察に捕まらなかったな。何か裏があるんじゃねぇか?」
九十九が一言目を切り出すと、さらに気味の悪い笑みを浮かべつつ「さて、どういうことかな?」と、九十九のことを試すかのように問うてくる数藤。
「だから、やり方が適当なんだよ。例えば【虚無の石櫃】の壁を壊して、遺体を中に入れた後に新しい壁を作ったってトリック――現場には壁を壊した際の削りカスが残されていたようだし、後で穴を塗り固めたといっても素人仕事だろ? いくらうまくやっても、ちょっと警察が調べる気になれば【虚無の石櫃】に穴を開けて、その後になって穴を塞いだことくらい分かりそうなものだ。それに、関係者の足取りを調べれば、事件当日にアリバイがないのがあんただけってことは分かっただろうし、車の中や家を調べられたら、犯行の実行が可能だったことくらい判明したはず。だが、実際のところあんたは捕まっていない。つまり、未解決になるには事件そのものが杜撰だと思うんだよ」
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