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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】
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それは、番組側があからさまに怪しいタイミングで、数藤に差し入れしたものだ――なんて警告する暇もなく、グラスの中身を飲み干してしまった凛。すでに2杯も飲んでいる数藤が大丈夫そうであるから心配はいらないだろう。あえて黙っておいてやるのも親切心というものだ。まぁ、本当のことを言ったら凛がギャーギャーうるさそうで面倒というのが本音だが。
「良かったらナッツもある。私は苦手だが、おそらくシャンパンに合うのではないか?」
空になった凛のグラスにシャンパンを注ぎながら、酒の肴まで紹介してやる数藤。もはや、九十九の楽屋が酒盛り場になりつつあった。
「あ、ミックスナッツ。凛、こういうの好きなんだよねぇ」
凛はそう言って包装されたナッツを手に取ると、ひとつ開けてナッツを片手にシャンパンを一口。このような非日常的な空間だからこそ、シャンパンのような嗜好品は贅沢になるのであろう。そう思って酒を要求したというのに、九十九に支給されたのは番組ステッカーなわけだが。
「おい桃山。そろそろ楽屋に戻らねぇとまずい。解答権を失うぞ」
正確な時間は分からないが、そろそろ楽屋にロックがかかる頃合いであろう。その時点で自分の楽屋にいなかった場合、ペナルティーが発生する。
「え、でもさ。凛が解答権を失っても他のみんなが解答できればいいじゃん。それに――木戸さんとは一緒の楽屋で過ごしたんだよね? 木戸さんはいいのに、凛は駄目なの?」
何をどう勘違いしているのか知らないが、このまま凛は楽屋に居座るつもりのようだ。確かに、1人くらい解答権を失ってもどうとでもなるし、もし数藤が居座ることにならなければ考えたかもしれないが――できる限り数藤とのやり取りを外部に漏らしたくない。凛が黒幕ではないという保証もないわけであるし。
「別にいても構わねぇけど、このおっさんもセットだからな。悪いことは言わないから楽屋に戻れよ」
人間の本能的な部分よりも、今は現状を打破しなければならないという理性のほうが打ち勝った。据え膳食わぬは男の恥かもしれないが、今は数藤を優先すべきだ。聞きたいことがいくつかあるし、黒幕の正体を暴く餌として、大いに利用させていただきたいところ。
「――じゃ、じゃあまた明日ね。明日は空けておいてよ」
凛はそう言うとナッツの小袋を数袋手に取り「これ、もらっていくから」と数藤に断って楽屋を出て行った。大分気に入ったらしい。
「馬鹿な娘だ。曲がりなりにも第2問の犯人が差し出したシャンパンを飲み、勧められるままにナッツを口にした。私が過去に人を殺したことに関して、警戒心すら抱かないらしい」
凛の背中を目で見送った数藤が、やや自虐的に呟き落とした。
「目の前で人を殺したわけじゃなければ、過去のことを掘り返してるだけだからな。実感がわかねぇんじゃねぇか?」
「良かったらナッツもある。私は苦手だが、おそらくシャンパンに合うのではないか?」
空になった凛のグラスにシャンパンを注ぎながら、酒の肴まで紹介してやる数藤。もはや、九十九の楽屋が酒盛り場になりつつあった。
「あ、ミックスナッツ。凛、こういうの好きなんだよねぇ」
凛はそう言って包装されたナッツを手に取ると、ひとつ開けてナッツを片手にシャンパンを一口。このような非日常的な空間だからこそ、シャンパンのような嗜好品は贅沢になるのであろう。そう思って酒を要求したというのに、九十九に支給されたのは番組ステッカーなわけだが。
「おい桃山。そろそろ楽屋に戻らねぇとまずい。解答権を失うぞ」
正確な時間は分からないが、そろそろ楽屋にロックがかかる頃合いであろう。その時点で自分の楽屋にいなかった場合、ペナルティーが発生する。
「え、でもさ。凛が解答権を失っても他のみんなが解答できればいいじゃん。それに――木戸さんとは一緒の楽屋で過ごしたんだよね? 木戸さんはいいのに、凛は駄目なの?」
何をどう勘違いしているのか知らないが、このまま凛は楽屋に居座るつもりのようだ。確かに、1人くらい解答権を失ってもどうとでもなるし、もし数藤が居座ることにならなければ考えたかもしれないが――できる限り数藤とのやり取りを外部に漏らしたくない。凛が黒幕ではないという保証もないわけであるし。
「別にいても構わねぇけど、このおっさんもセットだからな。悪いことは言わないから楽屋に戻れよ」
人間の本能的な部分よりも、今は現状を打破しなければならないという理性のほうが打ち勝った。据え膳食わぬは男の恥かもしれないが、今は数藤を優先すべきだ。聞きたいことがいくつかあるし、黒幕の正体を暴く餌として、大いに利用させていただきたいところ。
「――じゃ、じゃあまた明日ね。明日は空けておいてよ」
凛はそう言うとナッツの小袋を数袋手に取り「これ、もらっていくから」と数藤に断って楽屋を出て行った。大分気に入ったらしい。
「馬鹿な娘だ。曲がりなりにも第2問の犯人が差し出したシャンパンを飲み、勧められるままにナッツを口にした。私が過去に人を殺したことに関して、警戒心すら抱かないらしい」
凛の背中を目で見送った数藤が、やや自虐的に呟き落とした。
「目の前で人を殺したわけじゃなければ、過去のことを掘り返してるだけだからな。実感がわかねぇんじゃねぇか?」
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