クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】

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「ったく、俺の楽屋は溜まり場かなんかなのか? 前回は木戸、今回は数藤のおっさんに桃山と来たもんだ」

 九十九はそう言って小さく溜め息を漏らした。自然と頼られてしまっているのであろうが、九十九は可能な限り人と関わり合いたくない性分だ。単純に面倒くさいというのもあるが、純粋に1人でいるのが好きというのもある。協調性を第一に考える日本において、孤独というものは同情されるべきものであるように思われているが、好んで孤独でいる人種がいることを忘れてもらっては困る。群れたいのに独りになってしまうのと、群れたくないから独りでいるのとでは大違いだ。

「で、桃山は何の用だ?」

 数藤は明確な目的――というか企みを持って九十九のところにやってきたわけだが、凛は何の用なのか。楽屋がロックされた時点で自分の楽屋にいないとペナルティーとなるのだから、出歩くのは控えて欲しいところだが。

「あ――ちょっと九十九ッチとお話を」

「要するに取り入りに来たということか。ふん、雌が強い雄に取り入ろうとするのは、生物として当然のこと。ましてや、こんな状況下だ。恥じることはない」

 凛の言葉を遮った数藤は、得意げになって口を動かす。明らかにカチンと来た様子の凛は「このおっさんマジか」と、良くも悪くも素のリアクションを見せた。

「あのさ、そういうやつじゃなくて、なんか――このまま1人ずついなくなるのかなって思い始めたら、急に不安になって」

「ふん、勝手にいないことにしないでくれたまえよ。私こと数藤学は、まだここに存在している。不安になる必要はない」

 ――開き直りと言うのだろうか。それとも、自分の弱点……九十九がトドメを刺すきっかけとなった相貌失認症を隠す必要がなくなったからなのか。変に饒舌じょうぜつな数藤。凛は明らかにうざったそうな顔をしている。ここにいる時間が長引くにつれて、彼女の化けの皮……アイドルとしての仮面が剥がれかけているのかもしれない。

「どうだね? かなり年代物のドンペリがあるのだが、君も飲まないかね? アルコールは基本的に体には悪いものだが、脳をちょっとばかり勘違いさせる力を持っている。今のような状況だからこそ、アルコールに頼るのもありだと思うがね」

 数藤はそう言う、もうひとつのグラスに並々とシャンパンを注ぐ。そのラベルを見た凛が、やや驚いたかのように目を見開いた。

「それ、かなり年代物のドンペリじゃん。凛が働いているお店でも、軽く7桁する……」

「――店?」

 凛には似つかわしくないワードが出てきたことに、声を出して反応してしまった九十九。凛はその言葉をごまかすかのように「あー、じゃあいただきまーす」と、数藤のところに駆け寄ってシャンパンの入ったグラスをあおった。
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