クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】

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 数藤は、すでに番組にとって不要な人間。残念ながら、第3問には参加できない。それゆえに、ペナルティーなどあってないようなものだ。それならば、自分の楽屋に1人でいるよりかは、誰かの楽屋にいたほうが安全だ。そして、九十九に白羽の矢が刺さったというわけらしい。

「その通りだよ。いいや、それだけではない。おそらく、第1問の犯人を殺害した奴は、なんとかして私のことを降板させようと――殺そうとしてくるに違いない。あちらもそこまで馬鹿ではないだろうが、もしかするとその瞬間――私を殺しに来た人物を君が目撃することになるかもしれない。私は自らの命を守ることができるし、そちらは黒幕の正体を探れるかもしれないうえ、私の提案さえ受け入れれば、結果はどうであれ1千万円が手に入る。どうだね? 悪くはない相談だろ?」

 仮に一晩をしのぐことができたとしても、事実上の降板となっている数藤は、命を狙われ続けることになるだろう。それに、ここから外に出る手段も今のところない。単純に延命措置でしかないように思えるのであるが、きっと目の前のことだけで精一杯なのであろう。

「換金できるかどうかさえ分からねぇ小切手には、正直なところ興味がねぇ。ただ、おっさん――確かにあんたを餌にすれば、黒幕が釣れるかもしれねぇ。今晩だけって条件つきで、その話に乗ってやるよ」

 当たり前のように楽屋に居座られても困るから、条件付きで数藤の話に乗ってやる。すでに降板が決定してしまっている数藤。果たして、九十九が一緒にいるという状況で、番組側はどのように数藤を降板に追いやるつもりなのであろうか。

「交渉……成立だな」

 数藤がニヤリと笑みを浮かべたのと同時に、楽屋の扉がノックされた。体感的に数藤と会話を交わしてざっと5分ほど。藤木とやり取りしていた時間を含めると、おそらく後5分ほどで楽屋にロックがかかると思われる。一体誰だろうか。服を取り替えさせ、数藤を騙すダシに使うだけ使って、何も言わずに楽屋に戻ってきたから、アカリ辺りが文句を言いに来た可能性がある。

「勝手に入ってくれ」

 廊下のほうに向かって言うと、やや遠慮がちに扉が開く。隙間から楽屋へと顔を出したのは凛だった。

「やっほー、九十九ッチ」

 そう言いながらも楽屋を見回し、数藤の姿を見た凛は、小声で「何で人殺しのおっさんまでいるんだよ」と、心の声を漏らした。まぁ、心の声になっていなかったわけだが。数藤は鼻で笑って「なんとでも言うがいい」と漏らす。
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