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第2問 虚無の石櫃【エピローグ】

第2問 虚無の石櫃【エピローグ】1

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【1】

 前回とは違い、今回の九十九には明確にやることがあった。藤木がスタジオを後にする姿を見るや否や、その背中を追う。

 正解者に与えられるのは、希望する品と1千万円の小切手だ。これらを短時間でそれぞれの楽屋に配布することは不可能であり、ゆえに藤木に共犯がいるのではないかという疑いが浮上した。そして、藤木自身も共犯者のことを黒幕と呼んで認めている。だからこそ、いっそのこと藤木の後をつけてやろうと考えたのだ。しかし――スタジオを出ると同時に藤木が振り返り、不気味な笑みを浮かべた。

「さすがは九十九さん。察するに――黒幕がひょっこり顔を出すのを待っているのかもしれませんが、第1問とは状況が違います。第1問は司馬さん以外全員が正解でしたからね。支給品と小切手を7人分用意する必要がありました。ですが、今回はその半分以下でいい。私だけで楽屋封鎖までに充分配れることでしょう。嘘だと思うのなら、そこで待っていればいいです。特別に同行させて差し上げますから」

 藤木はそう言うと、第9の扉――司会者専用の控え室の中へと消えた。藤木の言う通りにするようで面白くはなかったが、とりあえずその場で待つ九十九。数分と経たないうちに藤木が出てきた。しかし、随分と荷物が少ない……というか、支給品らしきものを手にしていない。

「えっと……九十九さんが希望されたのは、当面のアルコール類――お酒というやつですが、これは支給できないことにします。お酒は判断を鈍らせますし、なによりも二日酔いのようなコンディションで番組に挑まれるのは問題がありますので。代わりに番組特製のステッカーを差し上げましょう」

 支給品の代わりに藤木が手に持っていたのはステッカーか。ステッカーは複数枚あり、また支給品らしきものを藤木が持っていないことから察するに、凛と眠夢の希望も蹴られてしまったらしい。凛にいたっては連続で番組グッズ獲得である。

「それと、1千万円の小切手です。ちゃんと換金できますから、無くさないように大事にしまっておいてくださいねぇ」

 ステッカーと同じような感覚で小切手を手渡してくる藤木。ステッカーという単なる紙切れと、小切手という紙切れ。同じ紙切れでも価値がまるで違う。ただし、ここにいる以上、どちらも単なる紙切れに過ぎないのであるが。

「それでは桃山さんと西潟さんの楽屋へ参りましょうか」

 藤木の後について凛と眠夢の楽屋に入ったが、特に何かが起きるわけでもなく、あっさりと小切手と支給品の配布が終わった。やはり九十九が思った通り、凛と眠夢に支給されたものも番組ステッカーだった。
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