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第2問 虚無の石櫃【解答編】

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 一体、何が起きているのか。自分だけ頭がおかしくなってしまったのだろうか。さすがに動揺を隠せなかったのであろう。それを察した様子の九十九が口を開く。

「さて、まずはひとつ明らかにしておきたいことがある。それは、ゼミ生が着用していたシャツについてだ」

 まさか、この男――あのことに気づいていたのか。数藤は解答席を見回すが、しかし確信を持てない。確信を持てるわけがない。

「シャツは確か――山田の提案で作ることになったんだよな? デザインをしたのは地味子と1号と2号の双子。業者に電話連絡をしたのが殺された牧村本人だったはず。それで、シャツの色がバラバラなのは寝坊教授の提案だった。どういうわけか寝坊教授はそのシャツがえらくお気に入りのようで、ゼミの集まりや行事で着用することを義務付けていたとか。そのくせ本人はそのシャツを着ないというな」

 九十九が並び立てているのはインタビューとして展開された再現映像の情報である。あのインタビューの情報から、九十九はきっとたどり着いてしまったのだ。数藤の秘密に。

「しかしまぁ、誰が見たってあのシャツはダセェよな。しかも、色合いも原色を基本としたものばっかりだしよ。でも、そもそもどうして寝坊教授はシャツの色をバラバラにすることを提案したんだろうな?」

 あぁ、間違いなく九十九は核心へとたどり着いている。そうでなければ、そんなところに注目するわけがない。話題として出すわけがない。不安な場面は何度かあった。おそらく、余興として行われた同調ゲームとやらも、ある情報を引き出すためだったのだ。

「あのさ、でも全員シャツがバラバラじゃないよね? 確か双子の1号と2号はお揃いのシャツ着てたし」

 そこで口を挟んできたのは凛だった。彼女は完全なる九十九の味方なのだから黙っていればいいようなものだが、おそらく物事に対する探究心のようなものが強いのであろう。

 インタビュー映像でも分かるように、それぞれの着ているシャツの色は基本的に異なっていた。牧村が緑、地味子のシャツが紫、山男が青、山田が黄色、そして1号と2号が赤。凛が指摘した通り、1号と2号は同じ色のシャツであるが、おそらくこの意図も、すでに九十九には勘付かれてしまっているのだろう。

「あぁ、それはきっと寝坊教授のなかで、2人はだったからだ。まぁ、残念なことに、それは寝坊教授の勝手な思い込みであって、本来なら1号と2号、別々のシャツにすべきだったと思うがな」
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