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第2問 虚無の石櫃【解答編】

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「あの、でも……第1問目で犯人を指摘してくれたのは彼だったし」

 全てが全て、自分の言葉に心が揺れ動くとは思っていない。全員でなくともいいのだ。ほんの少しだけ、心を動かせればいい。数藤は遠慮がちに放たれた柚木の言葉を、ばっさりと切り捨てた。

「そうやってみんなを信頼させる算段だったのかもしれない。大体、あの程度の事件――私にだって真相は分かっていたのだ。ただ、諸君らと関わるのがどうしても億劫おっくうでね。彼がベラベラと喋ってくれるから、それに任せただけのこと。別に彼がいなくとも、第1問目の真相にはたどり着けていたさ」

 第1問に関しては、嘘でもなんでもなく、数藤は答えにたどり着いていた。九十九の自己主張というやつが強くて、結局のところ彼の独壇場のようになってしまったわけだが、九十九がいなくとも真相にはたどり着けたのだ。それに、第1問目を解き明かしたからといって、第2問目の犯人ではないということにはならない。事実、ここにいる。第1問目を解き明かしておきながら、第2問目では犯人というポジションになってしまった男がここに。

 現在、九十九が犯人であるとフリップに書いたのは、数藤と眠夢の2人。残りの九十九、長谷川、凛、アカリ、柚木の5人が、数藤を犯人であると解答している。しかし、アカリには解答権がないため、実質的には2対4となっているわけだ。ここで長谷川が心変わりをして、九十九を犯人だと指摘すれば、その図式は3対3とイーブンに並ぶ。うまくいけば、そのまま逆転なんてこともあり得るのではないか。

「さぁ、本当に答えはこれでいいのかね? このままでは、犯罪に手を染めた人間が無事にここから出ることができて、私達のいずれかが死ぬ――そんなことが許されていいと思うのかね!」

 数藤が言葉を放った直後、どこからかすすり泣くような声が聞こえる。ふと、そちらのほうに視線をやると柚木だった。一度は数藤と書いたフリップを倒し「もう嫌……もう嫌です」と呟きつつ、マジックペンを走らせる。

「誰が犯人だとか、誰かのせいで誰かが死ぬとか――疑い合うなんてもう嫌です。だから」

 マジックペンを走らせた柚木は、藤木ほうをキッと睨みつけると、フリップを改めて出した。一度は数藤の名前が書かれたフリップ。数藤の名前には二重線が引かれ、その代わりに【犯人なんていない】という答えが書かれていた。それを見た藤木が口を開く。

「あの……伊良部さん。お気持ちは分かりますけど、それだと無効票扱いになります。よろしいですか?」
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