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第2問 虚無の石櫃【解答編】

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 ここからの流れは、フリップに答えを書いて提出したのち、解答者同士で最終的に答えを決定するために議論をする時間が設けられる。確か【最後の審判】とかいう名前がつけられていたと思うが、そこでそれぞれが答えを確定させるというもの。ただ、おそらくは覆らない。司馬の時と同じように、一度出した答えは覆らないであろう。それだけの自信が、九十九にはあった。犯人がまんまと罠にかかってくれたのだからなおさらだ。

「それではぁ、お手元のフリップを出してくだ――おや? それはそうと……」

 あらかじめ犯人以外の人間とは打ち合わせをしているものの、当然ながら藤木とは打ち合わせができていない。だから、この違和感に藤木が気づくのは必然だった。あらかじめ用意しておいた言葉を差し込む。

「番組を盛り上げたいなら、今思ったことは口にしねぇほうがいい。どうしてこうなっているのか――それが明らかになった時の面白みが半減するからな」

 藤木としては番組が盛り上がるに越したことはない。まぁ、この時点で犯人に仕掛けた罠の内容をカミングアウトしてやっても問題はないのだが、やはりインパクトが強いほうが罠の仕掛け甲斐があるというものだ。

「――何かしらの意図があるようですねぇ。ならば、今はあえて触れずにおきますか」

 番組が盛り上がるという話をしておけば、藤木も余計な詮索をしてはこない。九十九の予測通り、間違いなく違和感に気づいたであろう藤木は、それを見なかったことにするかのごとく、解答席から一瞬だけ目をそらした。

「それでは……。一応、これからの流れの確認ですがぁ、解答を皆さんにしてもらったうえで【最後の審判】として議論を行なっていただきます。この際に考えが変わった方は、答えを変更してもらっても結構。ここで答えを確定していただいてから、答え合わせとなります」

 クイズの流れは第1問目とまるで同じ。やや回りくどいような気もしないでもないが、正式に議論できる場が設けられるのはありがたい。これがあるからこそ、事件の真相を伏せたまま、他の解答者を説得することができたのだ。事件の肝となる部分は、答えが出揃ってからでも遅くはない。

「ちなみにですが、木戸さんはペナルティーによって解答権を失っておりますので、解答できません。まぁ、フリップを出してもらっても構いませんが、答えそのものは無効となりますので、よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げた藤木の口角が、ややつり上がっているように見えた。藤木はことの真相を知っている。だから、九十九がスタジオに仕掛けた罠の意図にも、ある程度たどり着いているはず。だからこそ、彼は今の言い方をしたのだと思う。

「それでは――準備はよろしいでしょうか?」

 藤木がわざわざ確認をとったのは、このタイミングでフリップにペンを走らせていた者がいたからであろう。犯人が誰なのかを証明するために、ついさっきまで時間を要したのだから仕方がない。そのペンは、間違いない確信と共に走らされているのであろう。

「では、一斉にフリップをお出しください!」

 わざわざ少し間を持たせてから放たれた藤木の一言。一斉に出されるフリップ。そのフリップに書かれていた名前は果たして――。
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