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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 どこまでへそ曲がりな男なのであろうか。再現映像を邪魔するパネルが全てオープンされたところで、数藤にとって損はないはずだ。むしろ、ここで変に流れに逆らうことで、自分が犯人だと疑われかねない。いいや――あまりにも露骨な態度を見せてきた数藤だ。その露骨さが、かえって彼を犯人から遠ざけているような気がする。第1問目でさえ、複雑でロジカルな内容だったのだ。まさか第2問目が安直で、自ら犯人だと名乗り出たほどの男が犯人だということはあるまい。もし万が一にもそうだとしたら、出題の順番が逆だと思う。

『とにかく、同調ゲームは――この藤木を含めまして、ほぼ同調できたという素晴らしい結果に終わりました。それでは、7枚のパネルをオープンします! モニターのほうにご注目ください!』

 藤木がそう言うと、画面がモニターを映したものへと切り替わる。8等分されていたパネルが1枚ずつオープンしていき、最終的に右下のパネルを1枚残した状態となった。まだ画面には何も映っていないが、再現映像を見るだけならば、これで充分であろう。

「こりゃ、完全に無駄なレクリエーションだったな。盛り上がりさえもしなかったし」

 まだ何も映っていない画面を眺めつつ、出雲がぽつりと呟いた。パネルもほとんどオープンされたわけであるし、そもそもやったことに意味があるのか疑問になるレベルの催しだったのかもしれない。第2問は【ディティクティヴタイム】があったり、今のゲームをやったりと、やや色々な要素を盛りすぎであるような気がする。

「これで番組側に何かしらの意図があったら、素直にすごいと思いますけどね」

 出雲と小野寺が軽くやり取りをする程度の時間を経たのち、モニター画面が映し出されたままの状態で藤木の声が聞こえてくる。

『さぁ、それでは最後の再現映像です。これは、寝坊教授を含む、ゼミ生の方々に、インタビューをしたものになります。インタビューには殺害された牧村さんのものも含まれています。もちろん、再現映像ですので、全く別の人間が演じておりますが――この中に決定的なヒントが隠されております』

 いよいよ大詰め。この再現映像によって、犯人は明らかになるのだろうか。実は【虚無の石櫃】での犯行については、大まかではあるが筋道が小野寺の中でできていた。しかしながら、まだ犯人を決定付ける肝心の部分が抜け落ちている。

 映像が切り替わり、黒の背景に白文字が浮かび上がる。

 ――牧村さんのインタビュー。
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