クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 窓が少ないせいか、随分と廊下は薄暗い。はるか遠くから聞こえる学生達のざわめきのようなものが、まるで別世界のものであるように聞こえた。ひっそりとしていて寂しいが、良く言えば静かな環境だといえよう。

 廊下のどん詰まりにある扉――。それの前で立ち止まった犯人は、ドアノブへと手を伸ばす。ドアノブを回して扉を開いた先には――おそらく研究室であろう。小綺麗に片付いているようで、しかしどこか散らかっている部屋が広がった。

『おはよう』

 犯人はそう言うと、颯爽と研究室の中へと入る。すでに研究室には先客が何人かいた。犯人は部屋の隣にあるロッカー室らしき場所へと向かうと、そこで上着を脱いで壁掛けにかけてある白衣と取り替える。白衣を羽織ると、申し訳程度に置いてあるような小さな姿見の前に立った。鏡の中に映ったのは、白衣姿の猿だった。白衣の襟を整えると、研究室のほうへと犯人は戻る。

 研究室の中には同じように白衣を着た猿がいる。着ているシャツが、色違いながら全く同じデザインだった。シャツの中央にはなにやら文字が書いてある。――【猿ばかりゼミ】。どうやら、ゼミで作ったシャツのようだった。少し前の記憶を掘り起こすと、鏡に映った犯人のシャツにも、同じ文字が書かれていたような気がする。色は確か紫だったはず。

 シャツの色は様々で、赤、緑、紫、黄色、青の5色。犯人の視点から見える猿は全部で6匹――いいや、6人おり、なぜだか赤いシャツの猿が2人いた。それ以外はバラバラの色のシャツを着ている。なんともカラフルな研究室だ。

 ふっと、画面がブラックアウトした。そこに後付けのごとく白いテロップが浮かび上がる。

 ――この時はまだ誰も知りませんでした。この研究室の仲間が殺されてしまうこと。そして、同じ研究室の中に、仲間の殺害を企てている人間がいることを。そう、まだ誰も知らなかったのです。

 ゆっくりと溶け込むかのごとく白い文字が消えると、画面はスタジオへと切り替わる。

「今ので――後半の再現映像は終わりなんでしょうか?」

 あまりにも呆気ない形で再現映像が終わってしまったものだから、思わず呟いてしまう小野寺。それに対して出雲が「そうみたいだなぁ」と漏らす。視聴者の立場からしてもそう感じるのだから、当事者ならなおさらであろう。画面の中の九十九が口を開く。

『おい、まさか今ので全部じゃねぇだろうな?』

 藤木に対して向けられた言葉。固定カメラで撮影されているであろう映像は、その動きがほとんどないため、なんだか一枚絵を見せられているような気がしてしまう。
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