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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 再現映像の後半を残しているため、この場で事件の全体像が見えないのは当然。もちろん【質問権】は有効に使いたいが、欲張って踏み込み過ぎてしまうと、藤木に回答を拒否される可能性がある。さじ加減が難しいが、この辺りの質問に留めておくべきだろう。柚木の質問が決まったところで、気味の悪い笑いと共に口を開いたのは数藤だった。

「くっくっくっくっ――。まだそんなところで足踏みをしているのかね? 被害者がどのように【虚無の石櫃】をのぼり、どのようにして中に降り立ったのか。これまでの情報を統合して考えれば、もはや答えは明白。どうやら、第1問目はまぐれだったようだねぇ」

 あえて名前は出してこなかったが、それは明らかに九十九への挑発だった。どうやら、ここまでの情報で、数藤は答えを導き出したらしい。まだ再現映像の後半部分も残っているし、正直なところ九十九には真相の見当がついていない状況。自分のほうが優れていることを証明したいのか、それとも第1問でお株を奪われてしまったことが面白くないのか。その言葉には悪意のようなものが含まれていた。

「だったら話してみろよ。大先生の名推理を、ぜひとも聞いてみたいもんだなぁ」

 九十九は皮肉たっぷりに返してやる。プライドの高い数藤のこと。これで、ムキになってベラベラと真相を喋ってくれればラッキーなのであるが、さすがにそんなことにはならない。

「ふん、誰がやすやすと教えるものか。自分の頭を使いたまえ。空っぽの脳みそをね――」

 九十九の皮肉に明らかな悪意を乗せて返してくる数藤。こめかみを指で叩きながら浮かべる笑みは、とにかく憎たらしい。

「なんだ、やっぱり答えなんて分かってねぇのか。ただのプライドの高いオッさんの戯言だな」

 あちらが皮肉を言えば、こちらはさらに皮肉を込めて返してやる。あちらが嫌味を言えば、こちらはさらに嫌味たっぷりに返してやる。このまま言い争いがヒートアップしてしまいそうだったが、それを藤木の言葉が遮った。

「番組としては、解答者同士の対立とか面白いんですけどね。口汚く罵り合うのはいただけません。ほら、昨今はコンプライアンスにうるさい世の中ですし。後でテロップにて【台本に沿って行っている演技です】みたいな苦し紛れの言い訳をしなきゃいけなくなりますから、やめていただけませんか?」

 そもそも、クイズの結果で人が死ぬというのに、コンプライアンスなんてよく言えたものだ。番組の趣旨そのものがコンプライアンス違反なのではないか。
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