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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 確かに、現状では全員分の【質問権】を行使できるだけの疑問点が挙げられていない。しかしながら、まるで疑問点がないわけではないし、焦りたくなる気持ちも分からなくはないが、焦れば焦るほど藤木の思うツボだ。アカリに向かって九十九は口を開く。

「焦る必要はねぇ。現段階で挙がっている疑問点は2つ。ひとつは、発泡スチロールのクズが、現場の再現に関係あるか否か。もうひとつは、伸縮式の梯子がどのように持ち込まれたかだ。しかも、基本的に藤木は【イエス】か【ノー】でしか質問に答えられない。具体性が必要な質問になれば、角度を変えて何人かでアプローチしなければならない可能性も出てくる」

 人間というものは、時間に追われるようになった途端に焦りを感じるものである。それが例え、どれだけ余裕のある時間設定だとしても、まるで時間が制限されていない時に比べれば、やはり時間を意識せざるを得ない。その差はあれど大なり小なりの焦りは生じるだろう。藤木はそれを狙って、無理矢理にルールを追加したのだと思われる。しかも1人あたり3分というのは、充分に焦ることのできる時間設定だ。けれども、本質的な部分を見れば、そこまで焦る必要もないことが分かる。

「それに、3分後に失効する【質問権】は俺の【質問権】のみだ。その後、同じ間隔で【質問権】が失効されるとして、次の失効は6分後、その次は9分後、12分後――と、段階的に失効するようになっている。つまり【質問権】の行使と並行していても、疑問点の洗い出しをする時間はあるってことだ。最初とその次の質問は、ほぼ決まっているようなもんだしな」

 焦る必要はない。表面上だけを見るのであれば、随分と差し迫った状況のように感じられてしまうが、実のところそうでもないのだ。冷静になって回せば、回しきれないことはないだろう。

「では九十九さん、最初の質問はどうします? 今後のことも考えると、その辺りのことを共有しておくべきだと思うんですけど」

 変に間延びした口調ではない時――その時こそ、眠夢がしっかり覚醒している時なのであろう。そんな彼女の意見に反対する理由はない。情報の共有は必要だ。例え、中に事件の犯人が潜んでいたとしても。

「現段階で明確にしておくべきもの……この発泡スチロールのクズが、現場の再現の一部か否かを確認しておくべきだろうな。これだけ不自然に散らばっていても、実際のところ関係あるかどうかは藤木に聞いてみないと確定できないからな」
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