クイズ 誰がやったのでＳＨＯＷ

第２問 虚無の石櫃【出題編】

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「人生にはゆとりというものも必要だよ。こんな時だからこそねぇ」

　数藤はそう言うと、明らかに人を小馬鹿にしたような表情を浮かべる。その横柄な態度を快く思わない人などいないだろう。彼が孤立するのは時間の問題だったのかもしれない。

「それにしてもぉ、きっと慌てて模型を作ったんですねぇ。藤木さん、床が発泡スチロールのクズだらけですよ」

　滅多に目を覚まさぬ眠り姫。眠夢が床に視線を落としながら言う。割りかし口調もしっかりしているから、彼女の中では覚醒中なのかもしれない。それにしたって常に眠たそうにしているし、睡眠障害のひとつでも抱えているのかと疑いたくなるほどではあるが。

「あ、本当だね。でも、あれ？　この発泡スチロールのクズ――散らばってる範囲が限定的じゃね？」

　たまに素が出てしまうのであろう。崩れた言葉遣いで発言をする凛。元アイドルということもあり、本来の自分を殺しながら生きてきたのであろう。偶像とはうまく例えたものだ。

「確かに――こっちのほうに集中しているみたいだな」

　そう言って長谷川は模型の側面――マネキンが体を預けていた壁とは逆の壁のほうへと向かう。言われてみれば、床に散らばった発泡スチロールのクズは、長谷川が向かった壁の外側に集中して散らばっているようだった。運ぶ際に多少のクズは舞うだろうが、しかしながら、それが一定の場所に集中するのは奇妙な話だ。

「大体、ここで模型を作ったわけじゃねぇんだ。これだけ発泡スチロールのクズが床に散っているのは明らかにおかしい」

　九十九も長谷川のいるほうへと向かい、床へとしゃがみ込む。

「だったら、どうしてこんなに発泡スチロールのクズが？」

　アカリの問いかけに、九十九は発泡スチロールのクズを指で摘むと、藤木のほうへと視線を移した。

「――これも、現場を再現している【何か】なんじゃねぇか？」

　発泡スチロールで作られた模型は【虚無の石櫃】を再現したものである。黒のマネキンは牧村の遺体を再現している。そして、不自然な形で床を汚している発泡スチロール――どう考えても意図的にばらまかれたそれも、単なるゴミではなく、現場を再現しているのではないだろうか。九十九はそのようなニュアンスを込めて藤木に問うが、しかし藤木も馬鹿ではない。

「それは【質問権】を行使していただきませんと――。なんでも簡単にお答えすると思ったら大間違いですよ。その疑問を解決したいのであれば、ぜひとも【質問権】を行使してください」