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第2問 虚無の石櫃【出題編】
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自然と自分に視線が集まっていることに気づく九十九。第1問で主導権を握ってしまったがゆえに、周囲は第1問と同じような目で九十九のことを見ているのであろう。意見の奪い合いをした数藤は、独立宣言をしてしまったわけだし。
「ほら、自由に調べていいってよ――。ちょっとは自分の頭を使ってみろよ」
人から頼られるのは、はっきり言って嫌いである。なんだか依存されているような気がして不愉快だ。それに、同じ立場になって物事に取り組んでもらわないと、ただただ答え待ちの人間の面倒を見るハメになってしまう。九十九とて完璧ではないし、見落とす部分があるかもしれないのだから、できるだけ他の意見や考え方、物事を見る角度などが欲しい。
九十九に促され、とりあえず模型のそばに歩み寄ってみる柚木とアカリ。それに長谷川が続く。凛はそれを傍観するだけで動く気がないようだ。眠夢は眠夢で、マイペースというべきか、ぼんやりと宙を見つめていた。
「おい、そこの君――邪魔だからどいてくれないかね?」
たまたま、数藤が眺めていた部分に体がかかってしまったのであろう。相変わらず偉そうな態度で、数藤がアカリ達のほうに向かって声をかける。もちろん、そんな声のかけ方をされて気分の良い人間などいない。アカリが口を開く。
「はぁ? 君……じゃ分からないんで、せめて名前で呼んでもらえます?」
アカリと柚木が揃って並び、模型を見上げていた状態で、数藤からのクレームが入った。すなわち、どちらに向かって発言したのか、はたから見ていても分からなかった。それに数藤の偉そうな態度が相まって、アカリは不愉快に感じたのであろう。
「――申しわけないが、君達は名前を覚えるほどの相手ではなくてねぇ。ほら、右側の君だ、君。そこに突っ立っていられると、模型を観察できないではないか」
なんとも横柄な態度である。九十九も人のことは言えないのかもしれないが、まだ数藤に比べたらよほど社交的であるし、また協調性もあるつもりだ。もっとも、あくまでも自分の価値観の中での話であり、実際のところどのように周囲へと映っているのかは分からない。ただ、数藤よりはマシであることくらいは分かる。
「分かりました。どけばいいんでしょう? どけば」
右側の君――という呼ばれ方をしたアカリは、しかし数藤相手にやり合うのも時間の無駄だと考えたのであろう。溜め息を小さく漏らすと場所を空ける。それを見て数藤は「結構」と一言。
「ほら、自由に調べていいってよ――。ちょっとは自分の頭を使ってみろよ」
人から頼られるのは、はっきり言って嫌いである。なんだか依存されているような気がして不愉快だ。それに、同じ立場になって物事に取り組んでもらわないと、ただただ答え待ちの人間の面倒を見るハメになってしまう。九十九とて完璧ではないし、見落とす部分があるかもしれないのだから、できるだけ他の意見や考え方、物事を見る角度などが欲しい。
九十九に促され、とりあえず模型のそばに歩み寄ってみる柚木とアカリ。それに長谷川が続く。凛はそれを傍観するだけで動く気がないようだ。眠夢は眠夢で、マイペースというべきか、ぼんやりと宙を見つめていた。
「おい、そこの君――邪魔だからどいてくれないかね?」
たまたま、数藤が眺めていた部分に体がかかってしまったのであろう。相変わらず偉そうな態度で、数藤がアカリ達のほうに向かって声をかける。もちろん、そんな声のかけ方をされて気分の良い人間などいない。アカリが口を開く。
「はぁ? 君……じゃ分からないんで、せめて名前で呼んでもらえます?」
アカリと柚木が揃って並び、模型を見上げていた状態で、数藤からのクレームが入った。すなわち、どちらに向かって発言したのか、はたから見ていても分からなかった。それに数藤の偉そうな態度が相まって、アカリは不愉快に感じたのであろう。
「――申しわけないが、君達は名前を覚えるほどの相手ではなくてねぇ。ほら、右側の君だ、君。そこに突っ立っていられると、模型を観察できないではないか」
なんとも横柄な態度である。九十九も人のことは言えないのかもしれないが、まだ数藤に比べたらよほど社交的であるし、また協調性もあるつもりだ。もっとも、あくまでも自分の価値観の中での話であり、実際のところどのように周囲へと映っているのかは分からない。ただ、数藤よりはマシであることくらいは分かる。
「分かりました。どけばいいんでしょう? どけば」
右側の君――という呼ばれ方をしたアカリは、しかし数藤相手にやり合うのも時間の無駄だと考えたのであろう。溜め息を小さく漏らすと場所を空ける。それを見て数藤は「結構」と一言。
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