クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
145 / 506
第2問 虚無の石櫃【出題編】

32

しおりを挟む
 自然と自分に視線が集まっていることに気づく九十九。第1問で主導権を握ってしまったがゆえに、周囲は第1問と同じような目で九十九のことを見ているのであろう。意見の奪い合いをした数藤は、独立宣言をしてしまったわけだし。

「ほら、自由に調べていいってよ――。ちょっとは自分の頭を使ってみろよ」

 人から頼られるのは、はっきり言って嫌いである。なんだか依存されているような気がして不愉快だ。それに、同じ立場になって物事に取り組んでもらわないと、ただただ答え待ちの人間の面倒を見るハメになってしまう。九十九とて完璧ではないし、見落とす部分があるかもしれないのだから、できるだけ他の意見や考え方、物事を見る角度などが欲しい。

 九十九に促され、とりあえず模型のそばに歩み寄ってみる柚木とアカリ。それに長谷川が続く。凛はそれを傍観するだけで動く気がないようだ。眠夢は眠夢で、マイペースというべきか、ぼんやりと宙を見つめていた。

「おい、そこの君――邪魔だからどいてくれないかね?」

 たまたま、数藤が眺めていた部分に体がかかってしまったのであろう。相変わらず偉そうな態度で、数藤がアカリ達のほうに向かって声をかける。もちろん、そんな声のかけ方をされて気分の良い人間などいない。アカリが口を開く。

「はぁ? 君……じゃ分からないんで、せめて名前で呼んでもらえます?」

 アカリと柚木が揃って並び、模型を見上げていた状態で、数藤からのクレームが入った。すなわち、どちらに向かって発言したのか、はたから見ていても分からなかった。それに数藤の偉そうな態度が相まって、アカリは不愉快に感じたのであろう。

「――申しわけないが、君達は名前を覚えるほどの相手ではなくてねぇ。ほら、右側の君だ、君。そこに突っ立っていられると、模型を観察できないではないか」

 なんとも横柄な態度である。九十九も人のことは言えないのかもしれないが、まだ数藤に比べたらよほど社交的であるし、また協調性もあるつもりだ。もっとも、あくまでも自分の価値観の中での話であり、実際のところどのように周囲へと映っているのかは分からない。ただ、数藤よりはマシであることくらいは分かる。

「分かりました。どけばいいんでしょう? どけば」

 右側の君――という呼ばれ方をしたアカリは、しかし数藤相手にやり合うのも時間の無駄だと考えたのであろう。溜め息を小さく漏らすと場所を空ける。それを見て数藤は「結構」と一言。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます

古池ケロ太
ミステリー
 わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。  古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...