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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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「えっと、よろしいでしょうかね? 延々と捜査をされても困りますので、時間は30分と決めさせていただきます。もちろん【質問権】を行使できるのは【ディティクティヴタイム】の間だけとさせていただきます。行使できなかった【質問権】はその場で消滅しますので、充分にご注意ください」

 実際に再現された現場を捜査できる【ディティクティヴタイム】と、それに付随する形で与えられた【質問権】なる権利。どこまで藤木が答えるつもりなのかは分からないが、この【質問権】なる権利は、使い方によって強力な武器になるかもしれない。もっとも、あえて各個人にしか答えないという、いやらしさが加わっているわけだが。

「他に何かございませんか? あ、ここでの質問で【質問権】を行使した――などと言い出したりはしませんのでご安心を」

 もうさっさと【ディティクティヴタイム】を始めてしまいたいのであろう。それに関しては同感である。このままグダグダとやっていても、頭が疲れるだけだ。まだ再現映像の続きも残っているようだし、今は情報の収集を優先したい。ここでしつこく食い下がっても、おそらく大した情報は手に入らないだろう。

 藤木の問いかけに対して声を上げた者はいなかった。バラバラながら、模型を中心に程よい距離で立っている九十九達と、あえてその集団を避けるかのごとく、1人だけ離れた場所で模型を眺める数藤。この分裂が後でどのような影響を及ぼすのか。今のところは未知数である。

「はい、それでは質問もないようですので、只今より【ディティクティヴタイム】をスタートします。レッツディティクティヴ!」

 カメラに向かって妙な決めポーズを見せる藤木。テレビ用の演出なのかもしれないが、いちいちダサいのをなんとかしてもらえないだろうか。見ているこちらのほうが寒くなってくる。そんな藤木は、そのまま特設セットの脇へと移動した。ぎりぎりカメラからは映っているポジションであり、もし【質問権】を行使したい場合は、そちらのほうで行使することになるのだろう。

 藤木がスタートを宣言し、セットの脇に移動すると同時に、いかにも探偵が捜査をしています――と言わんばかりの奇妙な音楽が流れる。どこかで聞いたことがあるような……しかし、どこかアレンジされていたり、音階がいじられていたりで、聞いていてどこかくすぐったい音楽だった。おそらく【ディティクティヴタイム】中はリピートで流すつもりであろう。たった1人で番組を回す藤木。さりげなく音楽を流すように操作するあたり、かなり手慣れたものである。あらかじめ番組の回しかたなどを入念にリハーサルしていたのであろう。
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