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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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「あのぉ、揉めるのは止めませんけど、そろそろ番組を進行させてもらえませんかね? みなさんがどのような姿勢でクイズに挑むかは自由ですので」

 反論でもしたそうに数藤が口を開きかけるが、それは藤木の言葉によってキャンセルされた。解答席から離れ、特設ステージまでやってきたものだから薄れているが、今はクイズ番組の真っ最中である。もちろん、解答者同士のやり取りは暗黙の了解となっているのだろうが、やり過ぎは良くないのであろう。

「あのさ、別にそこのおっさんが1人になろうと関係ないけどさ、とにかく今は目の前の問題に取り組むべきじゃない?」

 この中で一番そんなことは言わなそうな凛が言った。数藤の身の振り方よりもクイズのほうが最優先。生き残るという観点だけで見れば、彼女の判断がベストだ。

「そ、そうしましょうよ。今は正解を導き出すことのほうが大事ですし」

 教師というものは堂々と生徒達の先陣に立って、ついてこんと言わんばかりにクラスを引っ張るようなイメージがあったりするのだが、しかし柚木はどうにも違うらしい。凛が発言してから、ようやく絞り出せたのは賛同の一言のみ。教師とて人間であり、やはり様々なタイプがいるのだろう。先生として生徒を指導する立場としては、いささか引っ込み事案なところがあるように思える。

 とにかく、藤木の一言により、とりあえず数藤と言い合いは終了。本人はわざとらしく九十九達から距離を取って、事件現場の模型を見上げていた。

「さて、途中で話が脱線してしまったので、もう一度おさらいします。これから始まる【ディティクティヴタイム】では、文字通りみなさんに探偵となり、現場を捜査します。そして、みなさんにはそれぞれ【質問権】というものが与えられます。それぞれ一度ずつ、事件に関することを私に質問することができます。私は基本的に【イエス】か【ノー】でしか答えません。また【イエス】か【ノー】で答えられない質問にはお答えしません。また、真相に直結するような内容にもお答えできません。その基準は全て、この藤木にあり、明確な判断基準は明かさないこととします」

 説明するかのような回りくどい言い方をしたのは、視聴者も含めて、内容を番組へと切り替えさせるためであろう。司会の上手い下手というのは良く分からないが、そういった切り替え方に関しては、なかなか筋が良いのではないだろうか。
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