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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 この状況、決してよろしいとは言えない。今後、問題が進めば進むほど、間違いなく人の数が減ってくる。その度に、誰が犯人なのか探り合わねばならない。しかも、犯人はその時点まで、まるで何事もないかのごとく振る舞い、ある意味で他の解答者を騙しながら立ち回るわけだ。もちろん、解答者の立場からすれば裏切られたような気がするだろうし、それがまた根強い疑心暗鬼に繋がることだろう。

「さぁ、早速【ディティクティヴタイム】を始めようと思うのですが、もうひとつだけ補足をさせていただきます。解答者の方々それぞれに【質問権】というものを与えさせていただきます。これは文字通り、事件に関することを質問できる権利です。これに対して藤木は、絶対に嘘がつけないことといたします。しかし――質問は【イエス】か【ノー】で答えられるものに限らせていただきます。つまり、私の口から具体的なワードは出てきません。あと、例えば数藤さんのことを私のほうに突き出して『こいつが犯人か?』などと、犯人の正体に直結してしまうような質問も無効とさせていただきますので」

 第2問目から実装された新システム――【ディティクティヴタイム】。実際に現場が再現され、それを調べることができる上に、事件に関することを藤木に問うことのできる【質問権】が解答者に与えられる。これを駆使すれば、もしかすると一気に真相へとたどり着けるかもしれない。それにしても、再現映像の途中にこれを挟み込む辺り、悪意を感じずにはいられない。あえて全ての情報を開示しないことで、こちらがするべき【質問】を絞り込めなくしているのであろう。

「あの、これってもしかして物凄くチャンスなんじゃ――」

 アカリが誰に言うでもなく漏らす。全くもってその通りであるが、しかし使い方を間違えば痛い目に遭う。

「それは【質問権】を有意義に使えたら――の場合だ。ここでもし、事件の犯人に主導権を握られてみろ。下手をすると間違った方向に誘導されるかもしれない。うかつに人の言葉を信じねぇほうがいいかもな」

 九十九が言うと、数藤が明らかに人を見下すようなニュアンスを含みつつ、鼻で笑った。

「そう言っている君のことだって、うかつに信じないほうがいいのかもしれない。第1問は君が大活躍してくれたわけだが、しかし第2問の犯人ではない保証はない。だから私は最初から言っている。このクイズは、1人で挑むものなんだよ――。誰かと手を組んだところで、余計なしがらみが増えるだけだ」
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