138 / 506
第2問 虚無の石櫃【出題編】
25
しおりを挟む
カメラに向かってビシッと人差し指を突き出す藤木。またしても奇妙なシステムを持ち出してきたわけであるが、どうにも行き当たりばったりでやっている感がある。とにかく、再現映像ではなく、実際に現場をセットとして再現し、それを実際に解答者が調べるという趣向なのであろう。
「現場を実際に調べるとな――。して、この現場は、その当時のままを忠実に再現しているのかね?」
両手を後ろ手に組みながら、セットを見上げる数藤。即席で作られ、明らかに高さの足りない【虚無の石櫃】のレプリカは、その異様な姿形からか、妙な存在感があった。
「もちろん。そうでなければ【ディティクティヴタイム】の意味がありませんから。流れといたしましては、この【ディティクティヴタイム】が終了したら、改めて再現映像の後半をご覧いただく形になります。調べられることは今のうちに調べておいたほうが良いと思われます。あぁ、ただ――犯人の方は、この辺りで間違った真相のほうへと解答者の方々を誘導するようにしたほうがいいかもしれませんねぇ」
意味深なことを口にしつつ、藤木は一同のことを見回す。その態度は腹立たしいものの、言っていることに間違いはない。
司馬の死によって、降板と死がイコールで結びつくことが判明してしまった。もちろん、この第2問の犯人も、残った7人の中にいるわけであり、第1問と同じように正解者が過半数を突破してしまえば、犯人は降板――死ぬことになってしまう。それを回避する手段はひとつだけ。つまり、正解者が過半数に満たなければいい。そうすれば、解答者の中からランダムで1人が降板となり、犯人は卒業となる。解答者達は犯人を降板させるため、犯人は解答者の誰かを降板させるため、このクイズに挑まねばならない。
九十九は辺りを見回す。――犯人が間違った方向へと真相を捻じ曲げようとするのであれば、嫌でも犯人が主導権を握ろうとする場面が出てくるはず。つまり、現状において、目立った行動……発言をひとつするにしても、犯人だと疑われかねない。第1問では降板の意味がはっきりとしていなかったため、九十九の意見にみんなが賛同してくれたが、犯人が間違った答えに誘導してくるかもしれないという懸念が今後はつきまとうことになる。すなわち、例え九十九の出した答えが正しくとも、手放しでそれに乗っかるということができなくなるのだ。
答えを導き出すためには主導権を取らねばならない。しかし、必然的に主導権を握る人間は怪しく見えてしまう。疑心暗鬼の完成だ。
「現場を実際に調べるとな――。して、この現場は、その当時のままを忠実に再現しているのかね?」
両手を後ろ手に組みながら、セットを見上げる数藤。即席で作られ、明らかに高さの足りない【虚無の石櫃】のレプリカは、その異様な姿形からか、妙な存在感があった。
「もちろん。そうでなければ【ディティクティヴタイム】の意味がありませんから。流れといたしましては、この【ディティクティヴタイム】が終了したら、改めて再現映像の後半をご覧いただく形になります。調べられることは今のうちに調べておいたほうが良いと思われます。あぁ、ただ――犯人の方は、この辺りで間違った真相のほうへと解答者の方々を誘導するようにしたほうがいいかもしれませんねぇ」
意味深なことを口にしつつ、藤木は一同のことを見回す。その態度は腹立たしいものの、言っていることに間違いはない。
司馬の死によって、降板と死がイコールで結びつくことが判明してしまった。もちろん、この第2問の犯人も、残った7人の中にいるわけであり、第1問と同じように正解者が過半数を突破してしまえば、犯人は降板――死ぬことになってしまう。それを回避する手段はひとつだけ。つまり、正解者が過半数に満たなければいい。そうすれば、解答者の中からランダムで1人が降板となり、犯人は卒業となる。解答者達は犯人を降板させるため、犯人は解答者の誰かを降板させるため、このクイズに挑まねばならない。
九十九は辺りを見回す。――犯人が間違った方向へと真相を捻じ曲げようとするのであれば、嫌でも犯人が主導権を握ろうとする場面が出てくるはず。つまり、現状において、目立った行動……発言をひとつするにしても、犯人だと疑われかねない。第1問では降板の意味がはっきりとしていなかったため、九十九の意見にみんなが賛同してくれたが、犯人が間違った答えに誘導してくるかもしれないという懸念が今後はつきまとうことになる。すなわち、例え九十九の出した答えが正しくとも、手放しでそれに乗っかるということができなくなるのだ。
答えを導き出すためには主導権を取らねばならない。しかし、必然的に主導権を握る人間は怪しく見えてしまう。疑心暗鬼の完成だ。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます
古池ケロ太
ミステリー
わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。
古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる