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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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「確かに――最初の問題に比べたら簡単すぎるよな。事件の概要さえはっきりしていないってのに、もう犯人が判明しているようなもんだから」

 答えが安直であり、またあっさりとしていることに関しては、出雲も同じような意見を持っているようだ。ここまで簡単に答えが出てしまうような事件をクイズにするだろうか。小野寺は「その辺りは警戒したほうがいいかもしれません」と言うと、改めて意識をテレビのほうへと向けた。

 牧村の書き置きを見て【虚無の石櫃】へとやってきた一同。しかし、そこに牧村の姿はなく、代わりにあるのはそびえ立つオブジェと、広大な高原のみ。オブジェのかたわらに伸縮式の梯子が転がっていることを見つけた一同は、誰が言い出したのか、牧村の携帯電話へと電話をかけることにした。――ここまでが、出雲と話しながら耳を傾けていた内容である。ナレーションはまだ続いている。

 ――電話はゼミのリーダー的存在でもある山田さんがかけることにしました。すると、どうでしょう。携帯電話の着信音が【虚無の石櫃】の中から聴こえてきたのです。高さが20メートル近くもある【虚無の石櫃】の中からです。

 これまでずっと高原の背景を映していた画面が切り替わり、今度は簡易的なイラストのようなものに切り替わる。多分【虚無の石櫃】のイラストであろう。またしてもナレーションが流れ始めるが、これまでの女性の声ではなく、野太い男性の声だった。

 ――改めて説明しよう。この高原に作成されたオブジェである【虚無の石櫃】は、高さが20メートルにもなる建造物である。四角柱の形をしたそれの中は空洞になっており、地上からの出入り口はない。土台もコンクリートに製となっており、もし仮に出入りするとすれば、20メートルの高さにぽっかりと空いたてっぺんの穴のみなのだ。

 ドローンの映像でも見させてもらったが、基本的に【虚無の石櫃】には、出入り口というものがない。中は空洞となっているものの、その中に入る手段はないわけだ。あるとすれば、なんらかの手段で20メートルもの高さがある【虚無の石櫃】へとのぼり、てっぺんに空いている穴から入るしかない。そもそも、現場の様子から察するに【虚無の石櫃】をのぼること自体が難しいだろう。しかし、遺体はそんな【虚無の石櫃】の中から見つかった。

 またしても画面は高原を背景に映し、ナレーションも野太い声から元の女性の声へと交代する。おそらく【虚無の石櫃】の構造を説明する役割として割り当てたのであろうが、簡易的な説明だったし、わざわざ声の担当を変更する必要などあったのだろうか。
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