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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 事件現場は周囲になにもない高原。その高原に建てられた高さ20メートルのオブジェという名の煙突らしき建造物。その煙突の奥深くにて遺体が発見された。まだ、死因などは明らかになっていないが、そもそもどうして遺体が石櫃の中で発見されるなんてことになってしまったのか。その疑問が解決するのを待たずに再現映像は次の映像へと移る。

 暗転した場面に白地で【登場人物】という文字が浮かび上がる。前回のように全身がタイツに覆われた奴らが登場するのかと思ったら、どうやら今回は趣向が違うらしい。

 名前【山田さん(仮名)】とのテロップが出て、20代くらいの男性の顔が映し出される。それは見知った顔でもなんでもない。もちろん、解答者の誰でもなかった。再現映像に俳優やら女優やらを雇ったのであろうか。しかし――テレビで見たことのあるような顔でもない。もしかすると、劇団員の卵だったり、駆け出しの役者などを使っているのかもしれない。まぁ、おそらく事件とはまるで関係のないことなのだろうが。男性の顔が映し出されたままテロップが切り替わる。

 ――山田さんはゼミでのリーダー的な存在。今回の旅行も彼が計画を立てました。もし、牧村さんが計画的に殺されたのであれば、真っ先に疑うべくは彼なのかもしれません。

 テロップの文字には騙されない。言ってしまえば、再現映像はクイズ番組側が有利になるように作られているはず。そう考えると、明らかに誘導しているように見えてしまう。

 黙ってテレビ画面を見つめる出雲と小野寺。今日は曇りのようで、窓の外にはどんよりとした空気が漂っている。常に時計があるわけではないが、朝と夜の区別がつくだけありがたい。

 画面が切り替わり、今度は女性の顔が映し出された。普通に顔立ちの整った女性であるが、しかしテレビなどでは見かけない顔だ。名前は【田中さん2号(仮名)】とされている。今回はまともな仮名をつけてくれたのかと思ったが、残念ながらそうではないようだ。仮名に2号とはなにごとだ。2号とは。

 ――田中さん2号(以後2号)は、同じゼミに属する田中さん1号(以後1号)の双子の妹。事件当時の時点で破局していましたが、牧村さんとは、かつて恋人関係にあったようです。ベタかもしれませんが、元恋人が犯人というのも、充分にあり得るかと。

 なぜテロップに、いちいち作った人間のものであろう主観が入るのか。この辺りのことは平等であって欲しいというか、解答者に対してフェアであって欲しい部分だ。もっとも、ある意味で部外者である小野寺には、抗議する手段すらないのであるが。
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