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第2問 虚無の石櫃【出題編】
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【2】
『雄大な大自然に囲まれた町。その名もT町市。農業を中心に栄えてきた町であり、平成の中盤に6市町村が合併してできた町です』
ドローンで撮影したのであろう。町並みを上空から撮影する映像がしばらく続く。中心街になると、それなりに栄えてはいるが、しかしちょっと脇にそれると山があったり森があったり、はたまた川が流れていたり――自然と文明が融合しているような印象が強い。
「また始まったか……色々と分からんことがでてきたというのに」
映像を眺めつつ、親指をこめかみに押し当てると、ぐりぐりと指を捻る出雲。二日酔いというやつで、頭が痛いのであろう。
「それに関しては、またじっくり後で話しましょう。幸いなことに、時間だけは腐るほどありますし」
昨日の騒動――司馬の変わり果てた姿を見せつけられた後、小野寺はなんとかして頭の中で事実整理をしようとした。けれども、やはり酒が入ってしまっていたせいか、脳の情報処理能力に限界があり、仕方なく諦めて眠ることにした。出雲にいたっては説明するまでもなく、かなりの酒量を飲んでいたせいか、小野寺が眠りにつく前に、さっさと寝てしまっていた。時間という概念が不明になっているため、窓から差し込む朝日で目を覚ました。出雲を起こし、とりあえずインスタントラーメンという中々にヘヴィーな朝食をとり、そして現在にいたる。
「そうだな――。あー、それにしても頭が痛くてかなわん。昔はあの程度飲んでもなんともなかったのに」
そうは言うが、はたから見ていてかなり飲んでいた印象のある出雲。だから、あれほど飲みすぎるなと警告したというのに。案の定、途中で再びブラウン管が点き、司馬の死を知らされることになった。さすがに、そのことくらいは覚えているだろうが、今後は何かが起きた時のためにアルコールは禁止にしたほうがいい。小野寺もこの環境から逃れるために思わず手を伸ばしてしまったが、酒は判断力を鈍らせる。出雲からは反論意見が飛び出してきそうだが、しっかりと分かってもらわねばならない。
「とにかく、今は映像に集中しましょう」
時間通りに始まった番組。昨日までは解答席が全て埋まっていたが、今日は空席がひとつある。司馬が座っていた席だ。回を重ねるごとに、この空席が増えていくのだろうか。そう考えるとゾッとしたし、改めて恐ろしいと思った。
「分かった。ただ、俺はどうにも具合が悪くてな。役に立たなかったらすまん」
出雲はそう断りを入れ、真っ赤に充血した目をこすった。具合が悪いのは、あなたが飲みすぎたせいだ――とは言えず、その言葉を飲み込んだ。
『雄大な大自然に囲まれた町。その名もT町市。農業を中心に栄えてきた町であり、平成の中盤に6市町村が合併してできた町です』
ドローンで撮影したのであろう。町並みを上空から撮影する映像がしばらく続く。中心街になると、それなりに栄えてはいるが、しかしちょっと脇にそれると山があったり森があったり、はたまた川が流れていたり――自然と文明が融合しているような印象が強い。
「また始まったか……色々と分からんことがでてきたというのに」
映像を眺めつつ、親指をこめかみに押し当てると、ぐりぐりと指を捻る出雲。二日酔いというやつで、頭が痛いのであろう。
「それに関しては、またじっくり後で話しましょう。幸いなことに、時間だけは腐るほどありますし」
昨日の騒動――司馬の変わり果てた姿を見せつけられた後、小野寺はなんとかして頭の中で事実整理をしようとした。けれども、やはり酒が入ってしまっていたせいか、脳の情報処理能力に限界があり、仕方なく諦めて眠ることにした。出雲にいたっては説明するまでもなく、かなりの酒量を飲んでいたせいか、小野寺が眠りにつく前に、さっさと寝てしまっていた。時間という概念が不明になっているため、窓から差し込む朝日で目を覚ました。出雲を起こし、とりあえずインスタントラーメンという中々にヘヴィーな朝食をとり、そして現在にいたる。
「そうだな――。あー、それにしても頭が痛くてかなわん。昔はあの程度飲んでもなんともなかったのに」
そうは言うが、はたから見ていてかなり飲んでいた印象のある出雲。だから、あれほど飲みすぎるなと警告したというのに。案の定、途中で再びブラウン管が点き、司馬の死を知らされることになった。さすがに、そのことくらいは覚えているだろうが、今後は何かが起きた時のためにアルコールは禁止にしたほうがいい。小野寺もこの環境から逃れるために思わず手を伸ばしてしまったが、酒は判断力を鈍らせる。出雲からは反論意見が飛び出してきそうだが、しっかりと分かってもらわねばならない。
「とにかく、今は映像に集中しましょう」
時間通りに始まった番組。昨日までは解答席が全て埋まっていたが、今日は空席がひとつある。司馬が座っていた席だ。回を重ねるごとに、この空席が増えていくのだろうか。そう考えるとゾッとしたし、改めて恐ろしいと思った。
「分かった。ただ、俺はどうにも具合が悪くてな。役に立たなかったらすまん」
出雲はそう断りを入れ、真っ赤に充血した目をこすった。具合が悪いのは、あなたが飲みすぎたせいだ――とは言えず、その言葉を飲み込んだ。
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