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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 どんな理由があろうとも、基本的に主導権を握っているのは藤木である。結局のところ、こちら側が抱いた疑問の重要な部分は、全て曖昧にはぐらかされた感じがする。ただ、そんな中でもはっきりと藤木は言い切った。黒幕――このクイズ番組には黒幕という存在がいるということを。その黒幕は果たしてどこにいるのか。司馬を殺害した人間は、この空間……すなわち、九十九達が共有しているスタジオのどこかにいる。そいつが黒幕ということでいいのだろうか。うまくごまかされた部分もあるため、思考までもが不安定になる。

「それでは、モニターが降りて参ります。今回も映像問題となりますので、モニターへとご注目いただきますようお願いします」

 藤木がそう言うと、相変わらず趣味の悪いネオン管が上昇し、天秤であるかのごとく、代わりにモニターが降りてくる。おそらくモーター音なのであろう。小さな駆動音が、しかし広すぎるスタジオには良く響いた。

「さて、それでは簡単に概要を説明いたします。事件は芸術を前面に押し出し、街そのものを芸術のカンバスにしてしまった観光地で起きました。この街は十数年前より町興しとしてプロジェクトを推し進めてきました。例えば、人口が減ってしまったせいで廃校になってしまった学校の校舎をですね、数名の芸術家の手によって美術館に改装してしまったり、車でかなりのぼらないといけないような山の奥にオブジェを作ってみたりとですね、街のいたるところに芸術作品を点在させたのです。観光客はそれらを回って楽しむ――という趣向です」

 モニターとネオン管が完全に入れ替わる。またしても、モニターの向こう側で寸劇が始まってしまうのだろうか。重要であるから集中しようとモニターを睨みつけてみるが、しかしどうにも気が散る。司馬の一件が頭の片隅にあり、それが解決していない状況にあるせいだろう。

「この町の芸術作品はですね、年々増えておりまして。近年では、渓谷にある観光用トンネルの中に作られた芸術作品が全国的に有名になりましてねぇ。町興しを企てた方々の思惑通り、連休になると人が殺到するとか。もっとも、舞台となったのはそこではありません。すっかり寂れてしまっていたスキー場の跡地に作成された芸術作品――【虚無の石櫃】の付近で事件は起きました。……準備が整いましたので、早速再現映像のほうを見ていただきましょう。それではどうぞ!」

 藤木の言葉と同時に、モニターに映像が映る。司馬の一件が曖昧なまま迎えた第2問。九十九はモニターから視線を外すと解答席を見回した。

 ――今回の犯人も、この中にいる。それどころか、下手をすれば黒幕までもが潜んでいるのかもしれない。
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