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第2問 虚無の石櫃【出題編】

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 その一言に、明確なるどよめきが起きた。それをある程度想定していたであろう数藤と、九十九に限っては動じずにいたが、しかし他のみんなは互いに互いの顔色を伺うかのように辺りを見回す。

「それはぁ、協力者がいるってことでいいですかぁ」

 すっかりと見落としていたが、藤木の宣言に動じない者が、もう1名いたようだ。相変わらずのゆっくりした口調でありながら、手を挙げて藤木に問う眠夢の姿は、まさしく女子高生そのものである。ここは学校ではないというのに。

「えぇ――協力者どころか、黒幕だと考えてもらってもいいでしょう。逆に、この藤木こそが協力者のようなものなのです」

 そこまでベラベラと喋ってもいいのだろうか。饒舌じょうぜつな藤木の姿に、ふとそんなことを思う九十九。この先、クイズが進むにつれて、間違いなく解答者の人数は減っていく。それだけ、疑わしい人物も絞られてくるわけだ。もし、九十九が藤木の立場であったら、ここまでの情報は与えない。ちょっと喋りすぎだ。

「ちなみに、数藤さんがおっしゃった通り、ここは外界から閉ざされており、簡単に人が出入りできるようにはなっていません。もちろん、私も全てが終わるまで、ここから外に出ることはできないことになっています。ですから、間違っても私を襲撃して、外に出ようなんて思わぬように」

 わずかなやり取りではあったが、藤木の印象が多少変わった。これまでは、首謀者という目でしか見ていなかったが、どうやら首謀者――黒幕は他にいるらしい。あくまでも協力者という立場のようだ。もっとも、あちら側の人間ということに変わりはないのだろうが。

「ちょっと待て。だとしたら卒業したやつはどうなる? 降板が死とイコールなのはよく分かった。そして、犯人役の人間にとって降板と卒業は対極の位置にある。つまり、卒業はここからの解放――と解釈しているんだけどよ、ここが外界から閉ざされた場所なら、卒業したやつはどこに解放されるんだ?」

 九十九は単純な疑問を投げつける。ここまでのやり取りはクイズ番組とは直接関係ないが、しかし九十九達にとっては重要なものである。藤木自身がそれをやめようと思わないのであれば、是非とも納得いくまで情報を引き出させてもらいたい。あまりにも曖昧で分かっていないことが、この番組には多すぎる。

「一時的に別室にて待機していただきます。もちろん、卒業した時点で、それ以上番組には関わる必要もありません。まぁ、卒業が確約されるのは基本的に犯人役――すでに罪を犯している方ですので、皆さんの手で降板させていただきたいものですが」
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