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第1問 理不尽な目覚め【エピローグ】

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 妙に静まり返った廊下。いくつかの扉は少しだけ開き、九十九と同じように顔を覗かせていた。九十九は溜め息を漏らすと扉を全開にし、廊下へと足を踏み出した。まるでそれが合図だったかのように、他の楽屋からも人が出てくる。

「あ、ちょっと待って――」

 早速、辺りの様子を伺おうと歩き出した九十九を追って、アカリも楽屋から出てくる。ざっと辺りを見回すと、長谷川、柚木、凛も楽屋から廊下に出てきたようだった。興味がないのか、それとも寝ているのか。眠夢と数藤の姿はない。

「一体、何が起きたんだ?」

 足早に九十九のところにやってきた長谷川に対して、九十九は「知らねぇよ――」と返してやる。第1問目を正解に導いたことは間違いないが、だからといって変に頼られるのは迷惑だ。

 スタジオのほうに向かって廊下を歩いてみる。特に異変がないことを確認してから、九十九はきびすを返し、どん詰まりまで廊下を歩いた。特に異変はなし。それは分かりきっていたことだった。楽屋にいた時に聞こえた叫び声は、察するにどこかの楽屋の中から発せられたものだ。となると、真っ先に調べるべき楽屋は決まっている。

「あいつの――司馬の楽屋はどこだ?」

 自然と九十九の後をついて回る形になっていた長谷川、アカリ、柚木、凛――誰かに向けて問うたわけではなかったが、アカリがほぼ間髪入れずに答えてくれた。

「私の楽屋の真向かいです」

 そう言って九十九の前に出ると、小走りでひとつの扉の前まで向かったアカリ。扉を指差して「ここです」と一言。そちらのほうへと向かうと、自然と九十九が先頭に立つ形になった。

「おい、いるのか?」

 とりあえずノックをしてみる。しかしながら、中からの返事はない。念のためにもう一度だけノックをしてみるが、やはり返事はなかった。

「――もう中を調べてみたら?」

 どれだけノックをしても反応がない。だからこそ凛はそう提案したのであろうが、ポジション的に先頭に立っているのは九十九であり、調べなければならないのも九十九だ。面倒なことを押し付けられるのは勘弁して欲しい。

 楽屋にいた時に聞こえた悲鳴から、すでに嫌な予感はしていた。そして、もしかすると気づかないふりをしているだけで、この場にいる誰もが薄々と気づいていたのかもしれない。すなわち、降板の真の意味に。

 ドアノブを回すと扉をゆっくりと開ける。その先に広がっていたのは、九十九の楽屋と同じ光景。どの楽屋も同じ構造になっているのだろう。しかしながら、明らかにおかしな点があった。それがあまりにも現実離れをしていて、何が何だか一瞬分からなかった。
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