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第1問 理不尽な目覚め【エピローグ】
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「あ……あれ?」
やや焦ったかのようにドアノブをガチャガチャと回すアカリの後ろ姿に、大きく溜め息を漏らす九十九。散々無視を続けてきたものだから言いそびれてしまったが、どうやら彼女の様子から察するに、このことはまるで頭に入っていなかったらしい。
「藤木が言ってたろ? 15分したら楽屋にロックがかかるってよ」
スタジオを去る前に藤木は、15分後に楽屋にロックがかかることを公言していた。とどのつまり、アカリが九十九の部屋にいる間にロックがかかってしまったのだ。
「え……ちょっと困るんですけど。え、いや――本当に困るんですけど」
開かないと分かっているだろうに、しつこくドアノブを回し続けるアカリ。そんな間抜けな彼女のおかげで分かったことがある。
「なるほど。別に自分に割り当てられた楽屋じゃなくて、他人の楽屋にいても問題はないってことか――」
原則的にスタジオで収録する時間を除き、ほとんどの時間を楽屋で過ごさねばならなくなっている九十九達。しかしながら、こうして九十九の部屋にアカリがいても、両者共に楽屋の中にいることは間違いない。楽屋がロックされた時点で楽屋の外にさえいなければ、きっとペナルティーの対象にもならないのであろう。
「今さら出て行け――なんて言っても物理的に無理だろうしなぁ。仕方がねぇ、ゆっくりしていけよ」
九十九からすれば、それは奇跡的な親切心だった。彼女が間抜けなことをしてくれたおかげで、新たな情報が手に入ったことだし、目の前にある大量の食糧のせいで気分が幾分か良くなっていたのかもしれない。しかしながら、どうやらまるで別の意味に解釈されてしまったらしい。
「へ、変なことしようとしたら――大声出すから」
まるで自らの身を守るかのごとく、廊下に続く扉を背にして間合いを取ろうとするアカリ。その言動に思わず吹き出す。
「あのな……俺にも選ぶ権利ってもんがある。抱く女くらい選ばせろ」
ひとつの部屋に男女が2人きり。そこからアカリは身の危険を感じたようだが、その辺りについては心配ご無用。九十九にだって好みというものがあるし、その好みはおそらく一般的なそれに比べて高水準である。心配せずともアカリに手を出すつもりはさらさらない。それよりも、そろそろカップラーメンが食べ時だ。九十九は蓋を剥がすと、ご丁寧に楽屋の中に準備されていた割り箸を割った。
「はぁ? な、なんか――それはそれで傷つくんですけど」
やや焦ったかのようにドアノブをガチャガチャと回すアカリの後ろ姿に、大きく溜め息を漏らす九十九。散々無視を続けてきたものだから言いそびれてしまったが、どうやら彼女の様子から察するに、このことはまるで頭に入っていなかったらしい。
「藤木が言ってたろ? 15分したら楽屋にロックがかかるってよ」
スタジオを去る前に藤木は、15分後に楽屋にロックがかかることを公言していた。とどのつまり、アカリが九十九の部屋にいる間にロックがかかってしまったのだ。
「え……ちょっと困るんですけど。え、いや――本当に困るんですけど」
開かないと分かっているだろうに、しつこくドアノブを回し続けるアカリ。そんな間抜けな彼女のおかげで分かったことがある。
「なるほど。別に自分に割り当てられた楽屋じゃなくて、他人の楽屋にいても問題はないってことか――」
原則的にスタジオで収録する時間を除き、ほとんどの時間を楽屋で過ごさねばならなくなっている九十九達。しかしながら、こうして九十九の部屋にアカリがいても、両者共に楽屋の中にいることは間違いない。楽屋がロックされた時点で楽屋の外にさえいなければ、きっとペナルティーの対象にもならないのであろう。
「今さら出て行け――なんて言っても物理的に無理だろうしなぁ。仕方がねぇ、ゆっくりしていけよ」
九十九からすれば、それは奇跡的な親切心だった。彼女が間抜けなことをしてくれたおかげで、新たな情報が手に入ったことだし、目の前にある大量の食糧のせいで気分が幾分か良くなっていたのかもしれない。しかしながら、どうやらまるで別の意味に解釈されてしまったらしい。
「へ、変なことしようとしたら――大声出すから」
まるで自らの身を守るかのごとく、廊下に続く扉を背にして間合いを取ろうとするアカリ。その言動に思わず吹き出す。
「あのな……俺にも選ぶ権利ってもんがある。抱く女くらい選ばせろ」
ひとつの部屋に男女が2人きり。そこからアカリは身の危険を感じたようだが、その辺りについては心配ご無用。九十九にだって好みというものがあるし、その好みはおそらく一般的なそれに比べて高水準である。心配せずともアカリに手を出すつもりはさらさらない。それよりも、そろそろカップラーメンが食べ時だ。九十九は蓋を剥がすと、ご丁寧に楽屋の中に準備されていた割り箸を割った。
「はぁ? な、なんか――それはそれで傷つくんですけど」
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