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第1問 理不尽な目覚め【エピローグ】

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 なによりも現状――わけの分からないままに監禁されている今をかんがみての意見だった。こんな状況で酒など呑んでいられない。しかしながら、出雲がそんなことを素直に聞くわけがなかった。

「昼だろうがなんだろうが、他にやることもないだろ? クイズ番組とやらは終わったみたいだし、あの司会者の口ぶりじゃ、きっと次に放送されるのは明日だ。もうこうなったら呑むしかないだろ」

 こじつけというか、単純に呑む口実を作っているだけというか。どうせ出雲を止めたところで、それがゲンコツになって返ってくるだけだ。とりあえず自分が控えればいいと考えた小野寺は、出雲が放り投げたビール缶をキャッチした。常温保存なのだろう――生温い。どうせならキンキンに冷えたやつをいただきたいところであるが、それはきっと叶わぬ願いだ。出雲がプルタブを起こすのを見て、小野寺もプルタブを起こす。やはり冷えていないせいか、なんだかプルタブを起こす音も味気なく聞こえた。

「あとはツマミになりそうなものを探して来た。焼き鳥缶にツナ缶、締めにはカップラーメンだな。酒は腐るほどあるから、明日の朝まで呑み明かせるぞ」

 きっと、嗜好品である煙草や酒が見つかって、変に興奮してしまっているのであろう。なんとなく監禁されることに甘んじている様子の出雲。気持ちは分からなくないが、念のために釘を刺しておく。

「ケンさん。何が起きるか分かりませんから、あんまり呑み過ぎないでくださいよ。まぁ、呑むなとは言いませんので」

 逆にこんな状況だからこそ、息抜きが必要なのかもしれない。灰皿がないから仕方なく、床に煙草の吸殻を落とし、火を足でもみ消した小野寺。床がコンクリートむき出しだからこそできることであろう。

「分かってるよ。ただ、神妙な顔してじっと待っていたところで何も変わらんだろ? 酒は百薬の長って言うし、酒が入れば頭が回って、この状況を打破するアイデアを思いつくかもしれない」

 もはや酒を呑む理由を手当たり次第に言っているだけのように聞こえてしまう。ただ、出雲の言う通り、酒を呑もうが呑むまいが、現状はきっと変わらない。

「その、百薬の長って言葉のあとにこう続くの知ってます? されど万病の元――って。呑み過ぎても介抱なんてしませんからね」

 小野寺の忠告に「分かってる分かってる」と、もっとも分かっていない人の台詞を吐きながら、出雲は缶ビールに口をつけた。小さく溜め息を漏らした小野寺もビールに口をつける。

 ――やはり、生温いビールは決して美味いものではなかった。
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