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第1問 理不尽な目覚め【エピローグ】
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「それと、これはそれ以前の問題なんですけど――司馬が犯人だった事件の捜査があまりにも杜撰じゃありませんか?」
きっと出雲も同じようなことを考えていたのであろう。口に出して同意することはなかったが、小野寺に向かって小さく頷いた。
「司馬は被害者を殺害したのち、遺体を車の中に隠しています。でもって、行方が分からなくなった被害者の捜索に加わった。普通、そんなところに遺体を隠していたら見つかりそうなものなんですが、しかしどういうわけだか見落とされてしまっている」
現場の状況がどのようなものになっていたのか不明であるから、はっきりとしたことは言えない。けれども、人がいなくなったとなれば、もちろん警察もそこに介入していたはずである。ならば、現場にある車の中くらい調べてもいいようなものだし、遺体を発見できる可能性は高かったはず。しかし、どういうわけだか遺体は見つかっておらず、見落とされてしまった。これでは、警察の捜査が杜撰であると言われても仕方がない。少なくとも、小野寺が現場にいたのであれば、関係者の車の中くらい拝見させてもらったことだろう。
「確かに、それくらいのことは調べて当然だな。担当した刑事がよほどポンコツだったのかもしれない」
小野寺の疑問には出雲も同意しているようだ。しかし指先は相変わらず煙草を求めているのか、小刻みに震えているように見えた。
「それと、もっと根本的な問題。どうしてこんなところに僕達は監禁され、わけの分からない番組を観せられているのか。こんなことをして、一体何になるっていうんです?」
小野寺の言葉に小さく唸り声を上げた出雲は「そりゃ、これを仕組んだ人間にでも聞いてみるしかねぇな」と漏らした。もしそれが可能であれば、とっくの昔にやっている。それが叶わないからこそ、疑問ばかりが蓄積するのだ。
「それにしても腹が減ったなぁ。目が覚めてから何も食ってないしよ。小野寺、お前も食うか? インスタント食品ならよりどりみどりだぞ」
食欲を満たして煙草への渇望感をしのごうという気なのだろうか。出雲ほどではないが喫煙者である小野寺は分かっていた。食後に絶対ニコチンが欲しくなると。しかしながら、出雲の言う通り腹が減ってきたのも事実だ。とりあえず食事について当面の心配はないし、水も確保できている。それでもニコチンがないと思うと不安で仕方がないのが喫煙者というものだ。いっそのこと、食糧庫に煙草があったりしないだろうか――なんて、監禁されている身にしては贅沢なことを考えてしまう。
きっと出雲も同じようなことを考えていたのであろう。口に出して同意することはなかったが、小野寺に向かって小さく頷いた。
「司馬は被害者を殺害したのち、遺体を車の中に隠しています。でもって、行方が分からなくなった被害者の捜索に加わった。普通、そんなところに遺体を隠していたら見つかりそうなものなんですが、しかしどういうわけだか見落とされてしまっている」
現場の状況がどのようなものになっていたのか不明であるから、はっきりとしたことは言えない。けれども、人がいなくなったとなれば、もちろん警察もそこに介入していたはずである。ならば、現場にある車の中くらい調べてもいいようなものだし、遺体を発見できる可能性は高かったはず。しかし、どういうわけだか遺体は見つかっておらず、見落とされてしまった。これでは、警察の捜査が杜撰であると言われても仕方がない。少なくとも、小野寺が現場にいたのであれば、関係者の車の中くらい拝見させてもらったことだろう。
「確かに、それくらいのことは調べて当然だな。担当した刑事がよほどポンコツだったのかもしれない」
小野寺の疑問には出雲も同意しているようだ。しかし指先は相変わらず煙草を求めているのか、小刻みに震えているように見えた。
「それと、もっと根本的な問題。どうしてこんなところに僕達は監禁され、わけの分からない番組を観せられているのか。こんなことをして、一体何になるっていうんです?」
小野寺の言葉に小さく唸り声を上げた出雲は「そりゃ、これを仕組んだ人間にでも聞いてみるしかねぇな」と漏らした。もしそれが可能であれば、とっくの昔にやっている。それが叶わないからこそ、疑問ばかりが蓄積するのだ。
「それにしても腹が減ったなぁ。目が覚めてから何も食ってないしよ。小野寺、お前も食うか? インスタント食品ならよりどりみどりだぞ」
食欲を満たして煙草への渇望感をしのごうという気なのだろうか。出雲ほどではないが喫煙者である小野寺は分かっていた。食後に絶対ニコチンが欲しくなると。しかしながら、出雲の言う通り腹が減ってきたのも事実だ。とりあえず食事について当面の心配はないし、水も確保できている。それでもニコチンがないと思うと不安で仕方がないのが喫煙者というものだ。いっそのこと、食糧庫に煙草があったりしないだろうか――なんて、監禁されている身にしては贅沢なことを考えてしまう。
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