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第1問 理不尽な目覚め【解答編】

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 確か、課せられるペナルティーは、次のクイズに解答できなくなるというものだったはず。単純に正解者が過半数を超えればいいこと、また正解者に与えられる賞金や支給品のことを考えないのであれば、そこまで手痛いペナルティーではない。ただし、同時に何人もの解答者がペナルティーを課せられてしまうと、クイズが始まった時点で、解答可能な人数が過半数を下回る――なんて事態にもなり得る。まだ分からない点がある以上、下手にペナルティーを課せられることは得策ではないだろう。

 藤木がスタジオを後にする。惰性に従ってゆっくりと元に戻った鉄扉が、無機質で冷たい音を響かせた。取り残された解答者8人。沈黙がスタジオを支配する。

 ふらふらと覚束おぼつかない足取りで歩き出したのは司馬だった。一歩、また一歩とゆっくり鉄扉のほうに向かって歩く。その後ろ姿は、まるで死に体――ゾンビのように見えた。これからどんなことが起きるのか。どんな目に遭うのか。降板という曖昧で不気味なワードが、真綿で首を絞めるかのごとく、司馬を苦しめているのだろう。もっとも、同情する気なんてさらさらないが。

「あの……」

 引き留めるかのようにアカリが声をかけたが、しかし司馬の後ろ姿は何も語らず。振り返ることすらせずに、またしてもスタジオには鉄扉の閉まる音が響いた。そしてまた沈黙。沈黙が訪れる。

「――これからどうする?」

 長谷川が誰に問うでもなく言う。今後のことについて話し合いたいのだろうが、しかし数藤は冷たい一言でそれを拒絶した。

「どうするもなにも、楽屋とやらで待機するしかあるまい。それに、気になる点も見えてきたことだし、じっくりと1人で考えさせてもらうとするよ。そちらはそちらで好きにしたらいい」

 数藤が立ち上がったのを見た九十九は、小さく溜め息を漏らすと、それに続いた。はっきり言って、他のやつらは利用するだけ。仲良しこよしをするつもりはないし、馴れ合うつもりもない。そのスタンスだけは、数藤とまるで同じだ。

「現状、まだ分からないことが多い。お前ら、変に探ろうとしてペナルティーくらわねぇようにな。解答できる人間が過半数を下回るとか洒落になんねぇからよ」

 数藤の背中を眺めつつ、ゆっくりと解答席を後にする九十九。背後に助けを乞うような視線を感じたが、あえて振り返らない。

 ――鉄扉に手をかけ、スタジオを後にすると、何度目か分からぬ無機質で冷たい音が、九十九のことを見送った。
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