クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
93 / 506
第1問 理不尽な目覚め【解答編】

28

しおりを挟む
 確か、課せられるペナルティーは、次のクイズに解答できなくなるというものだったはず。単純に正解者が過半数を超えればいいこと、また正解者に与えられる賞金や支給品のことを考えないのであれば、そこまで手痛いペナルティーではない。ただし、同時に何人もの解答者がペナルティーを課せられてしまうと、クイズが始まった時点で、解答可能な人数が過半数を下回る――なんて事態にもなり得る。まだ分からない点がある以上、下手にペナルティーを課せられることは得策ではないだろう。

 藤木がスタジオを後にする。惰性に従ってゆっくりと元に戻った鉄扉が、無機質で冷たい音を響かせた。取り残された解答者8人。沈黙がスタジオを支配する。

 ふらふらと覚束おぼつかない足取りで歩き出したのは司馬だった。一歩、また一歩とゆっくり鉄扉のほうに向かって歩く。その後ろ姿は、まるで死に体――ゾンビのように見えた。これからどんなことが起きるのか。どんな目に遭うのか。降板という曖昧で不気味なワードが、真綿で首を絞めるかのごとく、司馬を苦しめているのだろう。もっとも、同情する気なんてさらさらないが。

「あの……」

 引き留めるかのようにアカリが声をかけたが、しかし司馬の後ろ姿は何も語らず。振り返ることすらせずに、またしてもスタジオには鉄扉の閉まる音が響いた。そしてまた沈黙。沈黙が訪れる。

「――これからどうする?」

 長谷川が誰に問うでもなく言う。今後のことについて話し合いたいのだろうが、しかし数藤は冷たい一言でそれを拒絶した。

「どうするもなにも、楽屋とやらで待機するしかあるまい。それに、気になる点も見えてきたことだし、じっくりと1人で考えさせてもらうとするよ。そちらはそちらで好きにしたらいい」

 数藤が立ち上がったのを見た九十九は、小さく溜め息を漏らすと、それに続いた。はっきり言って、他のやつらは利用するだけ。仲良しこよしをするつもりはないし、馴れ合うつもりもない。そのスタンスだけは、数藤とまるで同じだ。

「現状、まだ分からないことが多い。お前ら、変に探ろうとしてペナルティーくらわねぇようにな。解答できる人間が過半数を下回るとか洒落になんねぇからよ」

 数藤の背中を眺めつつ、ゆっくりと解答席を後にする九十九。背後に助けを乞うような視線を感じたが、あえて振り返らない。

 ――鉄扉に手をかけ、スタジオを後にすると、何度目か分からぬ無機質で冷たい音が、九十九のことを見送った。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます

古池ケロ太
ミステリー
 わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。  古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...