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第1問 理不尽な目覚め【解答編】
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実際に物があるわけではないため、想像上でフォームチェンジをしなければならない。しかしながら、違和感の正体はすでに明らかになっているため、特に知識のない人間でも理解できるはずだ。
「あ――構え方を逆にするんだったら、上から順番に弦が細くなっていくようになるね」
凛の言葉に数藤が「左様――」と気味の悪い笑みを浮かべた。
「上から順に弦が細くなっていく。これが本来あるべきギターの弦の張り方だ。しかし、一般的なフォーム……右利きの構え方だと、弦の順番がまるで真逆になってしまう。つまり――モニターに映っている白川の私物のギターは、一般的な右利き用ではなくて左利き用なんだよ」
白川の私物であるギターは、珍しい左利き用のものであった。これから明らかになるのは、白川本人が左利きだったということだ。黒井のヴァイオリンの弾き方は右利き、青野がスパイクを決めた利き腕も右、赤間がグローブをはめていたのが左ということは、彼もまた右利き。つまり、再現映像に出てきた登場人物のなかで左利きなのは白川だけ。
「さて――実は偶然ながら、ここにいる男の中にも、ただ1人だけ左利きの奴がいるんだよなぁ」
そう言いつつ司馬のほうへと視線をくれると、もはや諦めたのであろうか。司馬は真っ青な顔をして解答席に座り、ただただ前を見据えるばかり。九十九のほうなんて見ようともしない。
白川が男性であることが確定している以上、犯人の可能性があるのは九十九、数藤、司馬、長谷川の4人。アカリ、凛、眠夢、柚木は自然と容疑者から外れることになる。そして、九十九はすでに観察済みだった。
休憩という名の議論が始まった時のこと。九十九は解答席から離れなかったものの、トイレに向かったり、用意されたお茶を飲んだりと、それぞれが自由に行動をした。その際、九十九は解答席から遠目に観察していたのだ。すなわち、誰が犯人なのか確証を得るために。犯人から除外すべき人間を選別するため――というべきか。
数藤は――ペットボトルを開ける際に、左手でボトルを持ち、そして右手で開けていた。長谷川は、これまた右手で2リットルのペットボトルを持っていた。それ以外の場面を見ても、両者は右利きで間違いない。そして、九十九自身も右利きである。では、司馬はどうだったか。実は九十九の目の前で、左利きであることを示唆する仕草を何度か見せていた。
「あ――構え方を逆にするんだったら、上から順番に弦が細くなっていくようになるね」
凛の言葉に数藤が「左様――」と気味の悪い笑みを浮かべた。
「上から順に弦が細くなっていく。これが本来あるべきギターの弦の張り方だ。しかし、一般的なフォーム……右利きの構え方だと、弦の順番がまるで真逆になってしまう。つまり――モニターに映っている白川の私物のギターは、一般的な右利き用ではなくて左利き用なんだよ」
白川の私物であるギターは、珍しい左利き用のものであった。これから明らかになるのは、白川本人が左利きだったということだ。黒井のヴァイオリンの弾き方は右利き、青野がスパイクを決めた利き腕も右、赤間がグローブをはめていたのが左ということは、彼もまた右利き。つまり、再現映像に出てきた登場人物のなかで左利きなのは白川だけ。
「さて――実は偶然ながら、ここにいる男の中にも、ただ1人だけ左利きの奴がいるんだよなぁ」
そう言いつつ司馬のほうへと視線をくれると、もはや諦めたのであろうか。司馬は真っ青な顔をして解答席に座り、ただただ前を見据えるばかり。九十九のほうなんて見ようともしない。
白川が男性であることが確定している以上、犯人の可能性があるのは九十九、数藤、司馬、長谷川の4人。アカリ、凛、眠夢、柚木は自然と容疑者から外れることになる。そして、九十九はすでに観察済みだった。
休憩という名の議論が始まった時のこと。九十九は解答席から離れなかったものの、トイレに向かったり、用意されたお茶を飲んだりと、それぞれが自由に行動をした。その際、九十九は解答席から遠目に観察していたのだ。すなわち、誰が犯人なのか確証を得るために。犯人から除外すべき人間を選別するため――というべきか。
数藤は――ペットボトルを開ける際に、左手でボトルを持ち、そして右手で開けていた。長谷川は、これまた右手で2リットルのペットボトルを持っていた。それ以外の場面を見ても、両者は右利きで間違いない。そして、九十九自身も右利きである。では、司馬はどうだったか。実は九十九の目の前で、左利きであることを示唆する仕草を何度か見せていた。
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