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第1問 理不尽な目覚め【解答編】
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「それじゃ、次は青野の映像だ」
青野の趣味はバレーボール。かなりいいところまで行ったことがあると紹介されていた。右手を振り下ろし、スパイクを決める本人らしき姿がモニターに映し出され、それを一同が眺める。この何気ない映像の中に、犯人特定の鍵が挟み込まれているのだ。
「よし、次は赤間だ」
テンポ良く指示を出し、藤木は文句ひとつ言わずに従う。番組をスムーズに進行させるために労力はいとわないのであろう。果たして、そもそも彼の目的はなんなのか。そんなことを考えながら、映し出された赤間の静止画へと視線を移す。
ユニフォーム姿の赤間が映し出される。左手にグローブをはめ、右手に球を持っている姿はサマになっていた。
「最後に――白川だ」
これまで指示通りに映像を出してくれていた藤木であったが、なぜか白川の映像を出してくれない。やや困惑している様子の藤木に「どうした?」と問うと「いえ、白川さん自身が映っているものがありませんので、どうしたものかと」との返答。白川の趣味が紹介された時は、本人が演奏しているシーンなどが流れたわけではなく、白川の所有物であろうギターの静止画がモニターに映し出されたはず。
「白川のギターを真正面から撮影した静止画があっただろ? それでいい」
九十九の指示により、モニターには白川の私物であるギターが映し出される。それを眺めながら、九十九は周囲へと問う。
「さて、実はこのギターの静止画に不自然な点がある。いや、違和感と言ったほうがいいのか。ある意味では正しいんだが、大多数の感覚からすると、明らかにおかしな点があるんだが――誰か分かるか?」
静止画は壁に吊るされているアコースティックギターを正面から撮影したもの。ボディの真ん中にはぽっかりと穴が空いており、左から少しずつ太くなる弦の数は6本。この静止画に全ての答えが記されている。
「えっ――凛、楽器とか良く分からないんだけど」
モニターに映ったギターの静止画を眺めつつ首を傾げる凛。
「俺は昔ちょっとだけやってたが――ん? あぁ、そうか。このギター……俺には弾けないギターだ」
ギターを構えるジェスチャーをしつつ、何かに気づいたかのごとく顔を上げたのは長谷川だ。ギターをかじったことがあるようで、どうやら決定的な違和感に気づいてくれたらしい。
「あの――私は詳しく知りませんけど、ギターによって弾けたり弾けなかったりしたりするものなんですか?」
柚木の問いに長谷川は大きく頷き、まるで九十九の代弁をすべく決定打を放ってくれた。
「あぁ、白川のギターは……サウスポー仕様なんだよ。だから右利きの人間には弾けないと思う」
青野の趣味はバレーボール。かなりいいところまで行ったことがあると紹介されていた。右手を振り下ろし、スパイクを決める本人らしき姿がモニターに映し出され、それを一同が眺める。この何気ない映像の中に、犯人特定の鍵が挟み込まれているのだ。
「よし、次は赤間だ」
テンポ良く指示を出し、藤木は文句ひとつ言わずに従う。番組をスムーズに進行させるために労力はいとわないのであろう。果たして、そもそも彼の目的はなんなのか。そんなことを考えながら、映し出された赤間の静止画へと視線を移す。
ユニフォーム姿の赤間が映し出される。左手にグローブをはめ、右手に球を持っている姿はサマになっていた。
「最後に――白川だ」
これまで指示通りに映像を出してくれていた藤木であったが、なぜか白川の映像を出してくれない。やや困惑している様子の藤木に「どうした?」と問うと「いえ、白川さん自身が映っているものがありませんので、どうしたものかと」との返答。白川の趣味が紹介された時は、本人が演奏しているシーンなどが流れたわけではなく、白川の所有物であろうギターの静止画がモニターに映し出されたはず。
「白川のギターを真正面から撮影した静止画があっただろ? それでいい」
九十九の指示により、モニターには白川の私物であるギターが映し出される。それを眺めながら、九十九は周囲へと問う。
「さて、実はこのギターの静止画に不自然な点がある。いや、違和感と言ったほうがいいのか。ある意味では正しいんだが、大多数の感覚からすると、明らかにおかしな点があるんだが――誰か分かるか?」
静止画は壁に吊るされているアコースティックギターを正面から撮影したもの。ボディの真ん中にはぽっかりと穴が空いており、左から少しずつ太くなる弦の数は6本。この静止画に全ての答えが記されている。
「えっ――凛、楽器とか良く分からないんだけど」
モニターに映ったギターの静止画を眺めつつ首を傾げる凛。
「俺は昔ちょっとだけやってたが――ん? あぁ、そうか。このギター……俺には弾けないギターだ」
ギターを構えるジェスチャーをしつつ、何かに気づいたかのごとく顔を上げたのは長谷川だ。ギターをかじったことがあるようで、どうやら決定的な違和感に気づいてくれたらしい。
「あの――私は詳しく知りませんけど、ギターによって弾けたり弾けなかったりしたりするものなんですか?」
柚木の問いに長谷川は大きく頷き、まるで九十九の代弁をすべく決定打を放ってくれた。
「あぁ、白川のギターは……サウスポー仕様なんだよ。だから右利きの人間には弾けないと思う」
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