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第1問 理不尽な目覚め【解答編】

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「この事件には不可解な点が多く残っている。まず、第一にアリバイの問題だ。再現映像でも分かっていることだが、白川と青野はずっと他のグループと一緒にいた。両者ともに何度かその場を離れているものの、その時間は長くても5分だ。しかも、売店にあった監視カメラのおかげで、黒井が8時半まで確実に生きていたことが明らかになっている。つまり、実際に黒井が殺されたのは、8時半から行方が分からなくなった時間――9時までの30分間だ。他のグループと行動をともにしていた白川と青野は、長くても5分程しか空白の時間がない。黒井とずっと一緒にいて、しかもコテージに戻る直前まで、売店の店員と世間話をしていた赤間には、せいぜいコテージに戻る時間が空白の時間になっている程度だ。これが何を意味しているか分かるかい?」

 流れが自分のほうへと傾いたことにより、勢いのようなものがついたのであろう。司馬が得意げに口を動かす。まぁ――どういうわけだか、上手く警察の目をごまかすことができたのであろう。自分のやった犯行に、かなりの自信があるということか。

「犯人はどういうわけか、橋の上から突き落とすという手段ではなく、被害者を溺死させるという手段を選んでいる。溺死させたってことは、きっと犯人は被害者と一緒にわざわざ渓谷を降りたってことになるわよね――。どんな方法で渓谷を降り、どんな方法でキャンプ場に戻ったのかは分からないけど、それを実行するためには、きっとかなりの時間がかかったはず。他のグループと一緒にいて、その場を離れた時間が長くて5分程だった白川と青野、そしてコテージに帰るまでの間しか空白の時間がない赤間には……犯行が不可能ですよね」」

 柚木がぽりと漏らす。被害者の遺体は渓谷の谷底で見つかったというのに、被害者の死因は溺死で、目立った外傷は見受けられなかった。この状況こそが、今回の事件の鍵であり、また混乱を招いた原因なのだ。

「そう思わせたかったからこそ、犯人はあんな状況を作り上げたんだよ。どう考えたって、橋の上から被害者を突き落とすのがもっとも簡単な状況だったのに、犯人はわざわざ溺死という手段で被害者を殺害した。それはすなわち、被害者が溺死であり、また外傷はなかった――という情報から、イコールで犯人と被害者が渓谷を降りる必要があったという方程式を作り出し、自分には犯行が不可能であると思わせるためだったんだよ」

 九十九はそう言い放つが、いまいち理解できていないのであろう。凛が「もうちょっと分かりやすく」と要求してくる。そこに苛立ったかのように口を挟むは数藤だ。さきほど、柚木が口にした言葉を繰り返す。

「渓谷を何らかの手段で降りて、そして被害者を殺害したのちに、また何らかの手段でキャンプ場へと戻る。この工程を――ものの十数分でこなせると思うか?」
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