クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
63 / 506
第1問 理不尽な目覚め【出題編】

61

しおりを挟む
 誰も長谷川の言葉に応える者はいなかった。多目的とはいえ、バーベキューに50メートルもあるロープなど使うわけがない。

「つまり、多目的のロープだけは、他の意図……バーベキュー以外の目的で使用されたってことか」

 司馬がそう呟くと、長谷川は待っていたとばかりに頷いた。どうやら、彼の話には続きがあるらしい。

「その通り。そこで、俺は犯人がこう使ったんじゃないかなと思うんだ。犯人は被害者を気絶か何かさせたところで、橋の上まで運び、体に多目的ロープを巻きつけ、橋の上からゆっくりと被害者の体を降ろした。そして、そのまま被害者を溺死させたんだ。溺死させた後は多目的ロープを切って回収すればいい。こうすれば、犯人は河川に降りる必要がない上に、被害者の遺体に外傷をつけずに、溺死させることが可能だ」

 割りかし自信のありそうな長谷川の推測であったが、呆れるほどの大きな溜め息が、その自信を打ち砕いた。その出どころが九十九と数藤からであることは言うまでもなかった。

「ふっ、下らない。都合よく被害者を気絶させることすら難しいだろう。ましてや、ロープを体に巻きつけ、河川まで降ろして溺死させるなんて神業どころの話ではない。それに万が一にもその手段を実行したとして、ものの数分で実行できるものではないだろう? アリバイのある3人に難しいのではないかな?」

 人を完全に馬鹿にした様子の数藤であるが、今回は長谷川の推測のほうに無理がありそうだ。

「それに、橋の上でそんなことをしていたら、誰かに目撃されるリスクも出てくる。っていうか、そんな回りくどい手段を取るくらいなら、いっそのこと橋の上から突き落としたほうが簡単じゃねぇか。誤って転落したように見せかけることだってできるし、突き落とすくらいなら数分でやってのけることができる。はっきり言って、あんたの言ってることは的外れだな。的外れすぎて逆に正解なんじゃねぇかって思えるくらいに――」

 きっと、長谷川は被害者の死因に対し、遺体に外傷がなかったという謎を前提として、そのような答えを導き出したつもりなのであろう。しかしながら、その方法が上手くいくとは思えないし、仮に上手くいったとしても、誰かに目撃されるリスクもあるし、時間もかかりすぎる。すなわち、残念ながら、その手段での犯行は白川達には不可能だったということになってしまうだろう。

「そっ、そこまで言うのなら、そっちの考えを聞こうじゃないか。人の意見を馬鹿にするってことは、それなりの根拠となる考えがあるからだろう? まさか、何も考えていないのに、俺の推測を馬鹿にしたってことはないよな?」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます

古池ケロ太
ミステリー
 わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。  古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...