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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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 映像の中に散りばめられている疑問点。長谷川もまた、そのひとつを見つけることができたのであろうか。声の調子が妙に自慢気に聞こえた。

「コテージにはバーベキューを行うための備品が用意されていた。その内訳は、バーベキューセット、水汲みバケツ、多目的の50メートルロープ、調理道具一式に、簡易スコップだった。これらのうち、簡易スコップ以外は使用された痕跡が残っていた。でも、よくよく考えると、一体何に使ったのか不明なものが混じっている」

 長谷川が着目したのは、コテージの備品。その着眼点はなかなか鋭く、良いところを突いている。そう――長谷川の言う通り、用途不明の道具が混じっているのだ。

「えっと、調理道具一式は、きっとバーベキューに使用する食材なんかを切っただろうから、使用された痕跡があって当然ですよね?」

 長谷川がつけた筋道を撫でるかのように、柚木が口を開く。高校教師という、ごく一般的に見て、かなり立派な立場にいるはずの彼女であるが、その発言力が弱いせいか、どうにも存在感が乏しい。もしかすると、生徒からも舐められるタイプの先生なのではないだろうか。

「バーベキューセットも、使用されて当然ですよね?」

 柚木に続いてアカリが言った。調理道具一式とバーベキューセットは使用された痕跡があって当然。となると、残る道具はふたつだ。

「まぁ、水汲みバケツも使用されて不自然じゃないよね。コテージのシンクからバーベキューをやる場所まで水道を引っ張れたわけじゃないだろうし、そうじゃなくても色々と使い方はあるだろうから」

 女性陣による言葉のリレー。アカリに続いて凛が口を開き、後は眠夢がそのバトンを受け取れば、女性陣コンプリート……となる場面ではあったが、眠夢は会話に参加して来ず、その代わりに言い出しっぺの長谷川が入った。

「残るは多目的の50メートルロープ。こいつだけ、一体何に使われたのか分かっていない。他の道具は、なんとなくであってもバーベキューに結びつくが、多目的の50メートルロープだけは、全く使途が思いつかない。誰か、このように使ったんじゃないか――って意見があるなら、俺に教えて欲しい」

 使用された痕跡のあった道具の中で、明らかにバーベキューと結びつかないのは、多目的の50メートルロープだ。まず普通に考えて、50メートルものロープをバーベキューで使用することはない。しかしながら、使用された形跡は確かにあったのだ。これが一体何を意味するのか――少しずつであるが、議論らしくなってきた。
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