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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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 目をこすりつつ、大きなあくびをした眠夢。しかしながら、その鋭い意見に司馬は背筋が冷たくなった。とぼけた様子に見えている彼女ではあるが、思っているよりも頭が切れるのかもしれない。

「その通り。おそらく、休憩時間中も、俺達がこうして互いに意見を交換することは認められているんだろう。もちろん、前面に押し出してはいないがな。それは、ルールからも察することができる」

 気に食わないやつであることは間違いないのであるが、しかし九十九は鋭い推測を展開させていく。

「クイズの答えによる俺達の扱い――。過半数以上の正解があった場合、賞金の1千万にくわえて、犯人が降板となる。過半数の正解がなかった場合、賞金は発生せず、また犯人を除く解答者の中からランダムで1人が降板となり、犯人は卒業となる。この降板と卒業との違いは良く分からねぇが、ルールの流れから察するに、過半数以上が正解した場合は解答者側にメリットが、過半数以上の正解がなかった場合は犯人側にメリットが生じるような仕様になっていると思われる。となると、解答者側の着地点は、過半数以上の正解――ということになる。解答者にとってもっともメリットのある着地点だ」

 九十九の言いたいことは、この時点である程度分かっていた。いいや、クイズの細かいルールを引っ張り出してきた時点で、おおむねの予測はできていた。きっと、司馬と考えていることはほとんど同じだ。

「よし、それじゃあ、みんなで力を合わせて頑張ろー」

 そこで話に加わったのは、カメラに対してはあくまでもアイドルらしく振舞う凛だった。カメラからは視線を外さず、しかし藤川のダンスのせいで、カメラの視界から自分が外れたタイミングを見計らって振り返ると、片手を挙げて笑顔を見せる。そして言葉を発すると、再び前を向いた。プロ根性というべきか、器用なことをするものだ。

「最初に言ったが、俺はお前達と手を組むつもりは一切ない。ただ、そこの女が言ったことは間違っていない。解答者にとってベストな着地点は正解者が過半数を越えることだ。しかし、個人戦でそれをやろうとなると難しいだろう。だからこそ、表沙汰にはしていないが、お互いに意見の交換を行えるタイミングが意図的に用意されている。このクイズ番組は、個人戦のように見えて、実は犯人と解答者という図式を暗に組み立ててやがるんだ。だからお前らは俺の手駒になれ――。手を組むつもりはねぇが、利用くらいならしてやる」
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