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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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 司馬の考えはあっさりと見抜かれていたようであり、九十九に鼻で笑われた挙げ句に一蹴されてしまった。慎重なのは悪いことではないし、九十九の言っていることが間違っているとは思わない。けれども、素直にされるがまま――というのは面白くなかった。

「でも、このままでは――」

 本当に馴れ合うつもりなんてないのであろう。司馬のちょっとした反論に対して、九十九は無視という手段をとってきた。この男に協力を求めるだけ無駄なのかもしれない。例の口振りからして数藤もあてにならない。男性陣のなかで話を聞いてくれそうなのは長谷川くらいであるが、いささか席が離れているせいで密談はできそうにない。通路を挟んで隣となるアカリとでさえ、コソコソと内緒話をするには距離があった。

 なんだか頭の中をぐるぐると回り始めたBGM。スタジオの中央で相変わらず手拍子を続ける藤木。そのテンションについていっているのは凛だけであり、司馬を含めるその他の面々は、やや遠巻きに藤木の動きを伺っている。果たして、それぞれが何を思い、この場に着席しているのだろうか。

 ふとなんの前触れもなくBGMが止まった。それと同時に藤木が手拍子を止める。辺りの電気も落ち、中央の藤木をスポットライトが照らした。BGMに耳が慣れてしまっていたせいか、静寂が痛く感じた。

「6月18日――10時。今、この時をもってして、クイズ番組の常識が覆ります。実際に起きた事件……それを実行した犯人は、素知らぬ顔で解答席に座る。あなたの隣の席の人は大丈夫ですか? もしかすると、犯罪者なのかもしれません」

 解答席側の明かりが落とされているため、はっきりとは分からなかったが、自然と九十九と目が合ったような気がした。隣の席に座る人間が犯罪者かもしれない――。なんとも物騒な響きである。

「さぁ、いよいよ始まります。新感覚クイズ番組――誰がやったのでSHOW!」

 わざわざ仕切り直しのようなことをする必要があったのだろうか。司馬の冷静な突っ込みをよそに、一度は落ちたはずの照明が再び解答席を照らす。ネオン看板は光り輝き、これまた古いクイズ番組のようなジングルが流れる。昭和テイスト……いいや、平成テイストというべきか。とにかくひと昔前といった具合のタイトルコールが行われた。

 ――まだ現実感というものがわかない。本当にこれから、実際に起きた事件を題材にしたクイズ番組が始まるのだろうか。そんな不安と不穏の空気が、スタジオ内にはただただ渦巻いていたのであった。
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