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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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 普通、このような番組には多くのスタッフが関わっており、出演者に対しても進行の指示などをしてれるものなのであろう。しかしながら、おそらくあちら側――解答者ではないと思われるのは司会の藤木のみであり、それ以外にスタッフの姿などない。だからなのか、どうにもグダグダになってしまっているのは否めなかった。このまま番組開始まで、軽快で安っぽいBGMが流れ続け、司会の藤木はオーバーに手拍子し続けて、そして誰が見ているかも分からぬ画面の向こう側に向かって、元アイドルの凛は愛想を振りまくのだろうか。

 司馬は考える。この番組のことを。そもそも、この番組は無理矢理に拉致するという手段で出演者を集めている。もちろん、出演者の意向などは丸無視だ。しかも、番組収録以外は、鍵のかかる楽屋という名の部屋に閉じ込められるわけだ。この時点で拉致監禁罪が成立する。しかも、取り扱う問題も、文字通り問題だ。過去に起きた殺人事件――しかも、未解決の事件を取り扱うなんて、どんな神経をしているのだろうか。殺害された人の周囲には家族や友人など親しかった人間がいる。もし、その人達がこの番組を観たら、きっと悲しむのではないだろうか。大体、過去に起きた事件の犯人を独自に調べ上げ、それをクイズの答えにするなんて馬鹿げている。

 ――とにかく、色々とこの番組には問題が多すぎる。地上波はもちろんのこと、ネットなどで配信されたところで、必ずや問題視されることだろう。ならば、それを最大限に利用すればいいのではないか。つまり、視聴者に訴えかければいい。自らの意図で番組に出演しているわけではないこと、拉致をされて、なかば強制的に番組に出ていること。それらをカメラに向かって訴えかければ、不審に思った視聴者が通報してくれるはずだ。

「なぁ、あの藤木ってやつ――俺達で取り押さえられないか?」

 密談をするのであれば、BGMが流れているうちのほうがいい。司馬は前を見据えたまま、隣の九十九へと話しかけた。

「で、視聴者に向かって助けを求めるってか? はっきり言って安直すぎるだろ。大体、内容が内容なだけに地上波でこんなことをやればコンプライアンス以前の大問題になるし、ネットで不特定多数に垂れ流すってのもリスクが高い。それこそ、俺達が結託して番組をジャックして、視聴者に助けを求められたら意味がないしな。8人もの人間を拉致して、こんな番組をやってのけようとするやつが相手なんだ。今は静観したほうが利口だ。それと、さっきも言ったけど俺はあんたらと馴れ合う気はねぇんだ。誘いたきゃ他のやつを誘え。まぁ、止めはしねぇよ」
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