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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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「さてぇ、頭の悪い連中と一緒にいては脳みそが腐ってしまいかねない。申しわけないが、私はもう行かせてもらうよ」

 人を見下す態度が鼻につく――いいや、もはや人を人だと思っていないなような発言は、回り回って逆に清々しいくらいだ。きびすを返した数藤の背中に向かって、長谷川が「どこに行くつもりだ?」と声をかける。長身の体から発せられる一言は、かなりドスのきいたものだったように聞こえた。しかし、数藤はゆっくりと振り向き、どこか人を小馬鹿にするようなことを口にした。

「私達はなんのためにここに集められた? 台本に書いていた通り、クイズに参加するためだろう? 誰がこんなことをやったのかは知らんが、今は何者かの意思に従うべきだろう。大体、私達が簡単に外に出られる程度の間抜けが相手なら、ここまで用意周到に人を拉致などせん。全くもって遺憾ではあるが、実に手際よく、ここまで私を連れてきたことだけは評価するよ」

 確かに、数藤のような考え方を持っている人間からすれば、いちいち8人全員で集合しよう――なんて言っていることが馬鹿馬鹿しく聞こえるのかもしれない。スタジオのほうへとさっさと姿を消した数藤の背中を見送りつつ、司馬はふとそんなことを思った。8人もの人間を、こんなわけの分からない空間に手際良く連れ去れった人物。数藤の言葉から察するに、拉致をされた辺りのことは、彼とて曖昧なのであろう。誰にも見つからず、誰にも勘付かれず――そのように8人もの拉致を実行に移した相手が、まさか簡単に外に出られる手段を用意などしないだろう。こればかりは、数藤のほうが合理的なように思えた。

「え、えっと。これで6人ってことは、まだ2名の方が楽屋にいるってことですよね」

 数藤がスタジオの扉の向こう側に吸い込まれると、なんだが静けさを伴った空気が辺りに蔓延まんえんした。数藤の言った通り、自分達のやっていることは余計な労力を費やすだけにすぎない。何者かにそう言われているような気がした。それを払拭すべく声をあげたのはアカリだ。周囲に対しての気遣いは中々のものだ。

「あ、あぁ。まだ人が残ってるだろう楽屋をノックしてみようか。外でこれだけの騒ぎが起きていれば、普通は出てきそうなものだけど」

 司馬は真っ先に楽屋を出たから、廊下での会話がどれくらいの大きさで楽屋に届いているのかを知らない。それを聞いて長谷川やら凛が楽屋から出てきたわけだし、数藤にいたっては司馬達がやろうとしていることを否定した。すなわち、それなりの音量で廊下の会話は聞こえるはずだ。となると、残りの2人は意図的に楽屋から出てこないということになる。
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