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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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「さて、まずはここに集められた人達のことを把握したい。ざっと見た限り部屋は10部屋ある。台本みたいなのに目を通した感じだと、集められている解答者とやらは全員で8人いるみたいだ。部屋の数と解答者の数が合わないのは気になるところだけど、俺達以外の解答者の中に何か知っている人がいるかもしれない。手分けをして他の解答者から話を聞こう」

 ここの構造はいたってシンプルだ。廊下があって、その廊下の左右に5つずつ扉がついている。その先は楽屋と呼ばれる部屋であり、廊下の先はスタジオへと続く。まずは出口を探そうと考えていた司馬であるが、協力者を増やすのが最優先だと考え直した。この時間帯での脱出は無理であっても、次の収録前の時間で脱出することが可能かもしれない。脱出口を見つけ出すにしたって、人手が多いことに越したことはないだろう。

「分かりました。じゃあ、私はこっち側に呼びかけてみます」

 アカリはアカリの楽屋がある列を、司馬は司馬の楽屋がある列を――。自然と役割分担が決まり、そして2人は動き出そうとした。ひと部屋ずつノックして回るつもりだったが、どうやらその手間は省けたらしい。2人の会話が聞こえていたのか、まるでタイミングを見計らったかのように、いくつかの楽屋の扉が開いた。

「誰かが何かを知っているのならば、俺にも教えて欲しいもんだね」

 楽屋から出てくるなり口を開いたのは、身長が2メートルくらいありそうな大男だった。身長もさることながら横幅もある。ただ、脂肪がついているわけではなく、筋肉の塊のようだった。

「あのぉ、下手なドッキリだったら早めに言って欲しいんだけどぉ。りん、もうアイドル引退したしぃ、ちょっと番組ディレクターと話をしたいんだけどぉ。仕事の話ならぁ、事務所じゃなくて凛を通してもらわないとぉ」

 そう言うのは、実に奇抜な格好をした女性だった。ただ、その奇抜な格好はどこかで見たことがあった。歳は20代前半といったところか。明らかに周囲に媚びを売っている――というか、ぶりっ子をしている。ぱっと見た印象だけで決めるのは申しわけないが、おそらく同性からこころよく思われないタイプだ。

 廊下が騒がしくなってきたのか、また別の楽屋の扉が開く。ただ、扉から誰かが出てくることはなく、顔の真っ白な女性が顔を覗かせた。長い髪を真ん中から分け、ややおでこが広い印象。切れ長の眉毛と、細長の目は猫を連想させた。
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