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第1問 理不尽な目覚め【出題編】

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 台本のページ数は、たったの1ページ。立派な表表紙と裏表紙を合わせても3ページ。この程度ならば、わざわざ台本として仕立て上げる必要もなかったのではないだろうか。

 司馬は台本になっていない台本へと視線を落とす。そこには、新聞紙をわざわざ切って貼り付けたらしい文字列が並んでいた。

 ――【ルールその1】この建物には8名の解答者が集められています。基本的にそれぞれの楽屋にて待機することになり、楽屋から出ることができるのは、スタジオ収録開始15分前から収録中、そして収録後15分までの間です。それ以外の時間帯に解答者が外に出ていた場合はペナルティーとして、その次のクイズに解答できなくなります。

 思わず司馬は、台本を片手に出入り口と思われる扉のほうへと向かう。ノブにそっと手を伸ばして回してみるが――扉はビクともしない。ノブは回るのであるが、完全に空回りしている感じ。状況から考えて、ここが楽屋であることは間違いなさそうだ。改めて辺りを見回してみると、どうやらトイレやシャワーが完備されているらしい。そこまで確かめると、司馬は無意識に胸ポケットのほうへと手をやる。悲しき喫煙者の習性なのであろう。ポケットに煙草がなかったことは、さっきも確認していたというのに。

 司馬は大きく深呼吸をしてみる。吸えないと分かるとなおさらに吸いたくなるのが喫煙者というものだ。今はまだ小さな欲求で済んでいるが、これが大きくなってしまうと手に負えなくなるかもしれない。お新香付きのおにぎりもありがたいが、今は至福の一本が欲しかった。わけの分からないことが多すぎるし、今は煙草を吸って気持ちを落ち着けたい。

 何度か深呼吸を繰り返していると、ようやく煙草への欲求が薄れる。その隙にと、司馬は改めて台本に視線を落とした。

 ――【ルールその2】クイズは実際に起きた事件を取り扱います。解答者は最初の段階で8人。そして、クイズに出題された事件の犯人もまた、解答者8人の中にいます。正解した方には賞金として1問につき1千万円が進呈されます。ただし、正解者が全体の過半数に満たない場合は、例え正解者がいたとしても賞金は発生しないうえ、解答者の中からランダムで1名が降板となり、そのクイズの犯人だった方は、この番組から卒業となります。逆に過半数以上が正解した場合、犯人だけが番組から降板していただきます。

 尋常ではない。頭の中で本能的な警鐘が鳴らされていた。ただでさえ覚束ない現実味がさらに薄れる。
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