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3.虚栄の信頼
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「そうかもしれない。俺達に変えようがなくて、最新のヒントが出た時点でも手に入れることのできる情報って……」
押木は宮澤に意見を求めるかのようにして、亜由美から彼のほうに視線を移した。――その時だった。
ほんの気紛れ……いや、なんとなしに頭に浮かんだものが、なぜだか綺麗にぴたりと当て嵌まる。
「いや、ちょっと待てよ。もしかして、もしかして!」
押木はそう言って立ち上がると、由紀子遺体を安置している部屋に向かって駆けだした。
「どうしたんだ、押木君!」
当然、押木が突然取った行動に、宮澤と亜由美が驚きを見せ、慌てた様子で押木についてくる。それを振り返って確認した押木は、由紀子の部屋の扉を開け放ちながら叫んだ。
「間宮亜由美……みっ! 宮澤信次郎……うっ! 浦河杏奈! 次は仲沢義明! き……は、北村由紀子! 近藤直人! 戸田澪! そして最後は俺。そうか、そうだったんだよ! なんでこんな単純なことに気づかなかったんだよ!」
実に単純だった。それこそ、これまでどうして気づかなかったのかと疑ってしまうくらいに。
きっかけはささいなことであり、なんの気なしに亜由美から宮澤へと視線を移した時、両者の名前が頭に浮かんだだけのこと。しかし、それが押木に決定的な答えを提示してくれたのである。
間宮亜由美……平仮名に直すと【まみやあゆみ】だ。そして宮澤の名は信次郎。つまり【みやざわしんじろう】である。まみやあゆみ、みやざわしんじろう――ここまでくれば、答えは見えたようなもの。
「俺達の共通点は【しりとり】なんだよ。それぞれの名前が綺麗に【しりとり】になってるんだ。そして、8人の名前が全て繋がるのは間宮亜由美を最初に持ってきた時だけだ。なんせ俺がいるから……最後に【ん】のつく俺がな」
押木はそう言いながら、由紀子のそばに駆けより、おもむろに由紀子の衣服をまくり上げた。当然ながら下心などあるわけもなく、確かめたいことがあったからだった。
「宮澤さん、タオルでもなんでも構わない。彼女の傷口を拭きとるようなものを……あ、だったら水もあった方がいい。とにかく、彼女の傷口を確認したいんだ!」
押木の言葉の意味は分かるのだろうが、押木の考えがいまいち分からないのか、ワンテンポ遅れてから亜由美が反応する。
「あの、そんなことをしてどうなるの?」
「間宮君、今は押木君の指示通りに動こう。どうやら、答えがおぼろげながら見えてきたようだから。そして、それは押木君にしか分からないことかもしれないからな」
宮澤は押木がたどり着いた可能性を大方察したのか、いまだに訝しげに首を傾げる亜由美を諭し、備え付けの冷蔵庫から水の入ったペットボトルを持ってくるよう亜由美に指示する。宮澤自身はユニットバスの扉にかけてあるタオルを手に取り、それを手渡してくれた。亜由美はわけが分からないといった感じで首を何度も傾げつつも、それでも冷蔵庫からペットボトルを取り出すと差し出してくる。
「ありがとう」
押木はそれらを受け取ると、由紀子の遺体に向かって謝ってから、ペットボトルの水を由紀子の致命傷となった傷口辺りにぶちまけた。
押木は宮澤に意見を求めるかのようにして、亜由美から彼のほうに視線を移した。――その時だった。
ほんの気紛れ……いや、なんとなしに頭に浮かんだものが、なぜだか綺麗にぴたりと当て嵌まる。
「いや、ちょっと待てよ。もしかして、もしかして!」
押木はそう言って立ち上がると、由紀子遺体を安置している部屋に向かって駆けだした。
「どうしたんだ、押木君!」
当然、押木が突然取った行動に、宮澤と亜由美が驚きを見せ、慌てた様子で押木についてくる。それを振り返って確認した押木は、由紀子の部屋の扉を開け放ちながら叫んだ。
「間宮亜由美……みっ! 宮澤信次郎……うっ! 浦河杏奈! 次は仲沢義明! き……は、北村由紀子! 近藤直人! 戸田澪! そして最後は俺。そうか、そうだったんだよ! なんでこんな単純なことに気づかなかったんだよ!」
実に単純だった。それこそ、これまでどうして気づかなかったのかと疑ってしまうくらいに。
きっかけはささいなことであり、なんの気なしに亜由美から宮澤へと視線を移した時、両者の名前が頭に浮かんだだけのこと。しかし、それが押木に決定的な答えを提示してくれたのである。
間宮亜由美……平仮名に直すと【まみやあゆみ】だ。そして宮澤の名は信次郎。つまり【みやざわしんじろう】である。まみやあゆみ、みやざわしんじろう――ここまでくれば、答えは見えたようなもの。
「俺達の共通点は【しりとり】なんだよ。それぞれの名前が綺麗に【しりとり】になってるんだ。そして、8人の名前が全て繋がるのは間宮亜由美を最初に持ってきた時だけだ。なんせ俺がいるから……最後に【ん】のつく俺がな」
押木はそう言いながら、由紀子のそばに駆けより、おもむろに由紀子の衣服をまくり上げた。当然ながら下心などあるわけもなく、確かめたいことがあったからだった。
「宮澤さん、タオルでもなんでも構わない。彼女の傷口を拭きとるようなものを……あ、だったら水もあった方がいい。とにかく、彼女の傷口を確認したいんだ!」
押木の言葉の意味は分かるのだろうが、押木の考えがいまいち分からないのか、ワンテンポ遅れてから亜由美が反応する。
「あの、そんなことをしてどうなるの?」
「間宮君、今は押木君の指示通りに動こう。どうやら、答えがおぼろげながら見えてきたようだから。そして、それは押木君にしか分からないことかもしれないからな」
宮澤は押木がたどり着いた可能性を大方察したのか、いまだに訝しげに首を傾げる亜由美を諭し、備え付けの冷蔵庫から水の入ったペットボトルを持ってくるよう亜由美に指示する。宮澤自身はユニットバスの扉にかけてあるタオルを手に取り、それを手渡してくれた。亜由美はわけが分からないといった感じで首を何度も傾げつつも、それでも冷蔵庫からペットボトルを取り出すと差し出してくる。
「ありがとう」
押木はそれらを受け取ると、由紀子の遺体に向かって謝ってから、ペットボトルの水を由紀子の致命傷となった傷口辺りにぶちまけた。
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