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2.最初の犠牲者
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宮澤も押木の言葉に同意を見せ、話を次へと移そうとする。
「まぁ、私とあんた達に共通していることなんてないと思うけど。強いて言うのならば同じ人類ってことくらいじゃない?」
それにも関わらず、口を挟んでくる澪がうっとうしかった。黙って人の話が聞けないのだろうか。顔が見えていない分、それが茶々を入れているようにしか思えない。
「とにかく次だ。【私達の中では絶対に勝てない人が、答えの鍵を握っている】というのが、ふたつ目のヒントになるわけだが、これはひとつ目のヒントより難しいかもしれない。あまりにも抽象的なんだよ。この中に負けてしまう人間が含まれているという意味なんだろうが、そもそも何に負けるのかがさっぱり分からない。正直、現時点ではどちらのヒントも明確な答えを導き出せないだろう。みんなはどう思う?」
ひとつ目のヒントは、ここに集められた人間に共通点があるというもの。ふたつ目を解釈するに、どうやらこの中に負けてしまう人間がいて、その人間が鍵を握っているらしい。
押木も色々と思案を重ねてはみたが、ここに集まった人間に明確な共通点があるとは思えなかったし、そもそもふたつ目に関してはヒント自体が曖昧すぎて、何をどう考えていいのかさえ分からない。
「……本当に、これで犯人が分かるんでしょうか? 運営の人間もあんな感じですし、もしかすると私達をからかっているだけという可能性もあるような気がします」
散々唸った挙げ句、杏奈が出した答えがそれだった。恐らく、答えが一向に見つからなくて放り投げただけなのであろうが、それもないとは言い切れないものだった。
なんせ、見ず知らずの赤の他人同士を、こんなところに放り込んだ奴だ。そんな相手の言葉を信用できるかと問われれば、首を横に振るしかないだろう。
「仮に、その可能性があるとしても、私達に与えられた手掛かりは事件現場とヒントしかない。それが偽りのものだったとしても、信じるしかないだろうな」
宮澤も杏奈の意見を否定できないでいる。ヒントが曖昧で抽象的なのも、それを手伝っているのであろう。
「それで、これからどうするつもり? 事件の状況から考えても犯人を絞り切るのは不可能。ヒントはなにがなんだか意味が分らない。このまま他の誰かが殺されるまで待つ?」
扉越しの澪が、手詰まりとなった状況を他人事のように嘲る。自分はなにもしないくせに文句だけは一人前。どうも澪のことは好きになれそうにない。
「とにかく考えてみるしかないだろうな。まさか全てのヒントが出揃わないと犯人に辿り着けないようになっているわけでもあるまい。私達の共通点、そして負けるという意味。これらさえ分かれば、きっと状況は好転するはずだ」
宮澤は軽く澪をあしらうと、フロアをぐるりと見回してため息を漏らす。
「各部屋が危険だと分かった以上、部屋に戻って休むわけにもいかないだろう。私は二日や三日くらい不眠でも構わないが、北村君はほとんど休めていない。とりあえず、フロアで申し訳ないんだが、交代で仮眠をとったほうがいい。このままでは体が参ってしまうからな。全く、人間というものは必要のない睡眠というものを、どうしてとらねばならないのだろうかな」
「まぁ、私とあんた達に共通していることなんてないと思うけど。強いて言うのならば同じ人類ってことくらいじゃない?」
それにも関わらず、口を挟んでくる澪がうっとうしかった。黙って人の話が聞けないのだろうか。顔が見えていない分、それが茶々を入れているようにしか思えない。
「とにかく次だ。【私達の中では絶対に勝てない人が、答えの鍵を握っている】というのが、ふたつ目のヒントになるわけだが、これはひとつ目のヒントより難しいかもしれない。あまりにも抽象的なんだよ。この中に負けてしまう人間が含まれているという意味なんだろうが、そもそも何に負けるのかがさっぱり分からない。正直、現時点ではどちらのヒントも明確な答えを導き出せないだろう。みんなはどう思う?」
ひとつ目のヒントは、ここに集められた人間に共通点があるというもの。ふたつ目を解釈するに、どうやらこの中に負けてしまう人間がいて、その人間が鍵を握っているらしい。
押木も色々と思案を重ねてはみたが、ここに集まった人間に明確な共通点があるとは思えなかったし、そもそもふたつ目に関してはヒント自体が曖昧すぎて、何をどう考えていいのかさえ分からない。
「……本当に、これで犯人が分かるんでしょうか? 運営の人間もあんな感じですし、もしかすると私達をからかっているだけという可能性もあるような気がします」
散々唸った挙げ句、杏奈が出した答えがそれだった。恐らく、答えが一向に見つからなくて放り投げただけなのであろうが、それもないとは言い切れないものだった。
なんせ、見ず知らずの赤の他人同士を、こんなところに放り込んだ奴だ。そんな相手の言葉を信用できるかと問われれば、首を横に振るしかないだろう。
「仮に、その可能性があるとしても、私達に与えられた手掛かりは事件現場とヒントしかない。それが偽りのものだったとしても、信じるしかないだろうな」
宮澤も杏奈の意見を否定できないでいる。ヒントが曖昧で抽象的なのも、それを手伝っているのであろう。
「それで、これからどうするつもり? 事件の状況から考えても犯人を絞り切るのは不可能。ヒントはなにがなんだか意味が分らない。このまま他の誰かが殺されるまで待つ?」
扉越しの澪が、手詰まりとなった状況を他人事のように嘲る。自分はなにもしないくせに文句だけは一人前。どうも澪のことは好きになれそうにない。
「とにかく考えてみるしかないだろうな。まさか全てのヒントが出揃わないと犯人に辿り着けないようになっているわけでもあるまい。私達の共通点、そして負けるという意味。これらさえ分かれば、きっと状況は好転するはずだ」
宮澤は軽く澪をあしらうと、フロアをぐるりと見回してため息を漏らす。
「各部屋が危険だと分かった以上、部屋に戻って休むわけにもいかないだろう。私は二日や三日くらい不眠でも構わないが、北村君はほとんど休めていない。とりあえず、フロアで申し訳ないんだが、交代で仮眠をとったほうがいい。このままでは体が参ってしまうからな。全く、人間というものは必要のない睡眠というものを、どうしてとらねばならないのだろうかな」
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