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2.最初の犠牲者
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ならば、果たして誰が仲沢を殺害したというのか。
「とにかく、今は落ち着いて最初から状況を整理してみよう。現段階で仲沢君を殺害できた人間は限られているのかもしれないが、そこだけにこだわっていると全体像が見えなくなる恐れがある。戸田君、押木君。両者とも言い分があるのかもしれないが、今は落ち着いて私の話を聞いてくれ。戸田君も、部屋から出てきたくなければ出てこなくてもいい。なんせ……」
押木と戸田の間に割って入るかのように、宮澤はわずかに乾いた唇を動かすと、フロアををぐるりと見渡して続けた。
「少なくとも、この状況なら君を殺害しに向える状況ではないだろうからな」
宮澤はごく当たり前のことを言っただけだった。フロアに集まっているのは澪を除いた全員。誰も澪を殺しには向かえない。
結果的に互いが互いを見張り合っている状態にあるのだ。フロアから姿を消さなければ、犯人は澪を殺害することができない。だが、離れてしまえば真っ先に疑われてしまう。
現時点で生きているのは六人で、その内の五人が同じフロアにいるのだから、必然的に一人で籠城している澪は安全ということになる。
宮澤の視線につられるかのようにして、押木は亜由美の顔を一瞥する。亜由美、由紀子、杏奈。それぞれの瞳には明らかに警戒心のようなものが宿っていた。
犯人はこの中にいる。近藤を殺害し、どんな方法を用いたのかまでは分からぬが仲沢まで殺害してしまった冷酷な殺人鬼が……。ただ、状況的に押木には仲沢殺害のチャンスがあるため、亜由美達から向けられた瞳は、ひょっとして警戒心ではなく恐れを宿していたのかもしれない。
この状況下で疑うなというほうが無理な話なのかもしれないが、やはりそれを分かっていても疑いの目を向けられるのは耐え難いものがあった。
「とにかく、状況を整理してみよう。まずは、現在にいたるまでの経緯からだ」
それを振り払うかのように、あえて大きめの声を出す宮澤。疑心暗鬼の状態が続くことを嫌ったのであろう。
「まず、近藤さんの件だ。あの時、フロアいたのは私と北村君だけ。他の人間は全て自室に戻っていた。この状況から、フロアを通り抜けずに近藤さんを殺害するのは不可能だったように思えたが……」
「天井裏が存在することが明らかになったから、フロアを通過しなくても近藤さんを殺害できることが可能ってことになるんですよね」
口を開いた宮澤に続いたの杏奈だった。相変わらず顔色は悪いが、なにかを話していないと落ち着かないのであろう。それに宮澤が相槌を打つ。
「あぁ、天井裏を伝って各部屋を行き来することができるのならば、フロアを通過する必要もなくなる。そして、それが可能だったのは自室にいた人間だけだ。自分を擁護するようで嫌だが、私と北村さんには近藤さんを殺害することは不可能だ」
「とにかく、今は落ち着いて最初から状況を整理してみよう。現段階で仲沢君を殺害できた人間は限られているのかもしれないが、そこだけにこだわっていると全体像が見えなくなる恐れがある。戸田君、押木君。両者とも言い分があるのかもしれないが、今は落ち着いて私の話を聞いてくれ。戸田君も、部屋から出てきたくなければ出てこなくてもいい。なんせ……」
押木と戸田の間に割って入るかのように、宮澤はわずかに乾いた唇を動かすと、フロアををぐるりと見渡して続けた。
「少なくとも、この状況なら君を殺害しに向える状況ではないだろうからな」
宮澤はごく当たり前のことを言っただけだった。フロアに集まっているのは澪を除いた全員。誰も澪を殺しには向かえない。
結果的に互いが互いを見張り合っている状態にあるのだ。フロアから姿を消さなければ、犯人は澪を殺害することができない。だが、離れてしまえば真っ先に疑われてしまう。
現時点で生きているのは六人で、その内の五人が同じフロアにいるのだから、必然的に一人で籠城している澪は安全ということになる。
宮澤の視線につられるかのようにして、押木は亜由美の顔を一瞥する。亜由美、由紀子、杏奈。それぞれの瞳には明らかに警戒心のようなものが宿っていた。
犯人はこの中にいる。近藤を殺害し、どんな方法を用いたのかまでは分からぬが仲沢まで殺害してしまった冷酷な殺人鬼が……。ただ、状況的に押木には仲沢殺害のチャンスがあるため、亜由美達から向けられた瞳は、ひょっとして警戒心ではなく恐れを宿していたのかもしれない。
この状況下で疑うなというほうが無理な話なのかもしれないが、やはりそれを分かっていても疑いの目を向けられるのは耐え難いものがあった。
「とにかく、状況を整理してみよう。まずは、現在にいたるまでの経緯からだ」
それを振り払うかのように、あえて大きめの声を出す宮澤。疑心暗鬼の状態が続くことを嫌ったのであろう。
「まず、近藤さんの件だ。あの時、フロアいたのは私と北村君だけ。他の人間は全て自室に戻っていた。この状況から、フロアを通り抜けずに近藤さんを殺害するのは不可能だったように思えたが……」
「天井裏が存在することが明らかになったから、フロアを通過しなくても近藤さんを殺害できることが可能ってことになるんですよね」
口を開いた宮澤に続いたの杏奈だった。相変わらず顔色は悪いが、なにかを話していないと落ち着かないのであろう。それに宮澤が相槌を打つ。
「あぁ、天井裏を伝って各部屋を行き来することができるのならば、フロアを通過する必要もなくなる。そして、それが可能だったのは自室にいた人間だけだ。自分を擁護するようで嫌だが、私と北村さんには近藤さんを殺害することは不可能だ」
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